中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年6月18日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 政府は、今年の「骨太の方針2009」に盛り込む財政再建目標案を発表した。それによると、2011年度までの基礎的財政収支(プライマリー・バランス※注1)均衡化の達成はほぼ不可能となり、「国・地方の債務残高のGDP比を2010年代半ばにかけて安定化させ、20年代初めに安定的に引き下げる」ことを新たな基本目標としている。

 その上で、今後4年以内に年度ごとの財政赤字のGDP比を半減させ、10年以内に黒字化させることを打ち出しているが、そのためには、世界経済が順調に回復したとしても、消費税率を10%から12%に引き上げることが必要としている。

※注1・・・借金以外の歳入と国債元利払い分を除く歳出との収支で、どこまで新たな借金をしないで予算(国債費を除く)を賄えるかを示す指標

財政再建はラストチャンスに近い

 今回の試算を見るまでもなく、足元の日本の財政赤字の水準は、大幅な消費税の引き上げや歳出改革なくしては再建が困難な水準に達してしまったと言える。しかも、政府試算では、09年度のプライマリー・バランスはGDP比▲8.1%を見込むものの、今次経済対策(『経済危機対策』)がなければ、その値は▲5.7%であったとしており、今後4年間でのプライマリー・バランス比率半減は、新たな経済対策を打たないことだけで過半が達成されてしまう理屈である。

 言い換えれば、仮に10年度の景気回復が順調に進まず、さらなる財政赤字拡大につながる追加的な経済対策が必要になってしまうと、プライマリー・バランス黒字化目標はさらに先送りされかねない。ただでさえ10年ほど先の黒字化目標であるのに、それよりもずいぶん先となると、果たしてこのような目標がまともな目標たりうるのかという疑問もでてくる。要するに、今回政府が示した試算は、新たな財政赤字削減目標が現実的に考えられるラストチャンスに近い目標になる可能性を示したということになろう。

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