オトナの教養 週末の一冊

2014年10月30日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 高齢者の犯罪が近年増えている事実に着目し、その背景にある問題を丁寧な取材を重ねて浮き彫りにした本である。それまで善良に生きてきた人が、高齢者と呼ばれる年齢になってから初めて犯罪に手を染める。もちろん本人の責任は逃れられないが、人生の終盤にさしかかった人の犯罪が顕著に増えている背景には、高齢者と社会との関わりが以前とは大きく変質していることがあると指摘した。筆者(中村)も人生の折り返し点を過ぎ、今後自分が置かれた状況によっては、「もしかしたら、自分もやってしまうかもしれない」と身につまされた。

 本書は日本テレビを中心にネットワーク各局が制作に参加する「NNNドキュメント」の番組がもとになっている。この番組は筆者も見た。人生経験を積み、一見穏やかにみえる人が罪を犯し、その後深く後悔している姿に心が痛んだ。警察庁の資料によると、我が国の高齢者による犯罪は平成に入った頃から目立ち始め、特に平成10年以降に顕著となっている。

ストーカー、万引き、殺人…

『高齢初犯―あなたが突然、犯罪者になる日』(NNNドキュメント取材班、ポプラ社)

 本書には多くの事例が紹介されている。

・高齢者ストーカーの急増
・300円の惣菜を万引きした70歳男性
・別居中の夫に対するイライラが募って万引きを繰り返した66歳の女性
・過去の生活が忘れられずに財布を盗んで現行犯逮捕された65歳男性
・4万9000円の所持金がありながら万引きした70歳男性
・精神疾患の息子を殺めた67歳の父親
・同級生に貸したお金が戻らず、会社倒産後63歳で強盗致傷に走った男性

 などだ。

 どのケースもやるせない思いに襲われる。犯罪が悪いのは確かだが、そう断じ切きってしまうには何かひっかかる。なぜ人生経験を積み、それなりに分別もあるはずの高齢者が犯罪者になってしまうのか。

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