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2014年11月27日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国の習近平国家主席は11月16日、オーストラリアのブリスベンでブラジルのルセフ大統領と会談した。G20首脳会議に合わせ開催されたBRICS首脳会議だが、会議期間中にルセフ大統領と7月に続いてわざわざ再び会談したのだ。両首脳は太平洋と大西洋(ブラジルとペルーを結ぶ国際鉄道、通称「両洋」鉄道)を結ぶ鉄道建設推進を再確認した。「両洋鉄道」の建設は既に習主席が7月にブラジルを訪問した際にブラジル、ペルー両国首脳とともに共同声明によって確約していたものだ。

 中国は現在、世界各地で高速鉄道建設に携わっている。東南アジア(タイ)や中央アジア、中・東欧諸国、アフリカ、そして中南米だ。インドでの受注にも乗り気である。今回は習近平主席自らルセフ大統領との会談で再確認したが、李克強首相が外遊に出る際にはほぼ毎回高速鉄道の売り込みを図っており、「高速鉄道セールスマン」と揶揄されるほどだ。

新華網・『寰球立方体』(410号) http://www.xinhuanet.com/world/jrch/410.htm

 このように中国が世界各地で力を入れて建設を進める高速鉄道だが、必ずしも全てが順風満帆ではない。野心的で活発な海外進出の陰でリスクも顕在化しつつある。ミャンマーでは住民の反対に遭い計画が頓挫し、メキシコでは入札プロセスに不正があったとして白紙撤回され、大統領が糾弾される羽目になっている。トルコでは開業当日に故障が発生して運転が一時停止した。そしてトラブルはそれに止まらない。中国国内で2011年7月に追突事故が起きて大勢の死傷者が出たが、今ではほとんど触れられず、教訓として伝えられることもなくなっている。

 そこで今回は中国が世界で進める高速鉄道建設プロジェクトの全体像を見るべく、中国国内外の論評を紹介したい。一つは、新華社のネット版『寰球立方体』(410号)が組んだ特集「中国高速鉄道が海外に出て“さなぎが蝶に”」(11月19日)であり、もう一つは華僑サイトの博訊網に掲載された「中国の高速鉄道には本当に一生懸命」(11月8日)という論評である。前者は政府系通信社ということもあり、プロジェクトにはもろ手を挙げての絶賛であり、これまで配信した記事15本をまとめて載せている。後者は前者と比べれば慎重でリスクも指摘している。

自信満々な世界進出の目論み

 『寰球立方体』高速鉄道特集のイントロは次の言葉から始まる。「安全で信頼性があり、先進的技術でコスパは高い。運営の経験は豊富であり、中国の高速鉄道はその独特の優勢を誇り、世界から注目を浴びている」。温州市で起きた追突事故など忘れ去られたかのような書きぶりである。

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