2024年4月26日(金)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年7月15日

 「自爆テロをしようとしている人間はすぐに見分けがつく。その兆候が明らかだからだ。なぜなら、ほとんどの場合、そわそわしているからだ。当然ながら、自爆テロのベテランなど存在せず、みな初心者だからだ」

 元軍人のリーチャーは、イスラエルの諜報機関が作成した、自爆テロへの対応マニュアルを学ばされたことがあり、自爆テロを見分ける12のポイントがあると文章は続く。

 The list is twelve points long if you’re looking at a male suspect. Eleven, if you’re looking at a woman. The difference is a fresh shave. Male bombers take off their beards. It helps them blend in. Makes them less suspicious. The result is paler skin on the lower half of the face. No recent exposure to the sun. (p1)

 「男の場合、自爆テロ者かどうかを見分けるポイントは12ある。女の場合は11だ。違いはひげの剃り跡だ。自爆テロをしようとしている男はあごひげをそり落とす。その方が、街中に溶け込める。注意もひかない。しかし、顔の下半分の青白い部分が目立つ。その部分だけ最近、陽に当たっていないからだ」

 そしてまさに、主人公リーチャーは未明のニューヨークの地下鉄の電車の中で、自爆テロ容疑の11か条に当てはまる女に出くわす。自爆テロを止めようと思い、リーチャーは女に話しかけるが、女は突然かばんから拳銃を取り出して、なぜか自殺してしまう。警察は単純な自殺として処理しようとするが、女が国防総省の職員であることが判明、警察だけでなくFBIの捜査官からの聴取を受け、警察署を出た後に、謎の男たちにも、女から何か渡されなかったかと追及される。

 そうしたやりとりの中で、アメリカ陸軍の特殊部隊の元隊員だった下院議員に関する極秘情報を、女が持ち出したことが分かり、リーチャーは独自に、自殺の裏に隠された真相を探るため、その下院議員をしつこく追いまわす。

物語の端々に織り込まれる"アメリカらしさ"

 ニューヨークから首都ワシントンDCに電車で行き、議員会館にまでおしかけるシーンは興味深い。次に引用するのは、リーチャーが議員会館を2度目に訪れた場面だ。

 The same guard was on duty at the Cannon Building’s door. He didn’t recognize me. But he let me in anyway, mainly because of the Constitution. Because of the First Amendment in the Bill of Rights. Congress shall make no law abridging the right of the people to petition the Government. (p179)

 「前と同じ警備員がキャノンビルディングの入り口にいた。警備員は俺の顔を覚えていなかった。しかし、いずれにせよ、合衆国憲法のおかげで、警備員は俺を通してくれた。修正第1条が次のように定めているからだ。議会は、国民が政府に陳情する権利を制限する法律を制定してはならない」

 評者(森川)もアメリカ駐在時代に、ワシントンDCの議員会館の建物に入ったことがあり、入り口の金属探知機を通れば、自由に議員の部屋に簡単に行けた記憶がある。日本の永田町の議員会館の受付が面倒くさいのに比べ、あまりの開放的な運営に驚いた記憶がある。今でも当時のままなのかは知らないが、少なくとも本書ではそういう描写になっている。


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