サイバー空間の権力論

2015年5月1日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 実際、クウェートに生まれ6歳でイギリスに渡ったハメド・エムワジという現在26歳の青年が、2012年にシリアに入り、そのままISILに加入している。ロンドンのウエストミンスター大学を卒業し、プログラマーとして働いていた彼は現在、「ジハーディ(聖戦の)・ジョン」という名前で活動し、後藤健二氏をはじめとした外国人捕虜の殺害動画に複数回登場している。彼のISIL参加への動機は定かではないが、報道では以前からイギリス政府に目をつけられており、執拗な追跡が逆に彼を過激派へと追いやったとの意見もある。

 また先進国に特有の、モノはあっても幸せを感じることができず、緩慢な日常生活に鬱屈を感じる若者が血の飛び交う「生」の世界を求めてISILに参加するケースもある。アジアでも韓国の若者が勧誘の結果ISILに参加したことが知られているように、ISILに参加する者は世界中に点在している(http://japanese.joins.com/article/024/190024.htmlhttp://www.nikkei.com/article/DGXMZO82486790Y5A120C1000000/を参照)。それはもはや単なる宗教的理念を超えて、グローバル化とその社会体制に不満を感じる人々の集合としてISILが機能しているといった面もある。故に世界中からアクセス可能なインターネットは、彼らにとっては情報拡散ツールとして常に重要な位置を占める。であるが故に、ISILに参加する海外からの若者(一部報道では数千人規模と想定されている)は必ずしもISILの理念に共鳴したり勧誘戦略に同調したわけではなく、上述の経済格差や差別の問題が複合的に絡み合っている。

世界中をハッキング

 ハッキングによって世界中にアピールも行うISIL。3月には「ISILハッキング部門」を名乗るグループが米軍関係者100人の氏名や米国内の住所、写真といった情報を公開し、「在米の兄弟たち」に殺害するよう呼びかけるといった事件があった。こうした情報はハッキングというよりは、新聞記事やSNSといった公の情報から抽出したものではないかとの見方もあるが、いずれにせよ威嚇によって世界中にその存在をアピールすることに成功している。

 とはいえ、「ISILハッキング部門」を名乗るだけで、実際にISILの内部にハッキング部門があるかどうかの判断は難しい。むしろ、ISILと直接の関係はないが彼らを支持するグループや、面白半分で彼らの名前を利用しているだけのグループも存在するだろう。

 そんな中、明確にISIL支持を掲げる「Cyber Caliphate(サイバーカリフ)」というハッキング集団がいる。今年1月に彼らは米中央軍のTwitterとYouTubeの公式アカウントを一時的に乗っ取り、2月には米ニューズウィーク誌のTwitterアカウントをハッキングしている。

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