サイバー空間の権力論

2015年5月1日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 Twitter社もこうしたアカウント削除に積極的ではあるが、上述の通りISIL関連のアカウントは雨後の筍のように毎日開設されていることから、いたちごっこになってしまっているのが現状である。逆にISILの支持者たちがネットで、Twitter社の創業者の一人、ジャック・ドーシー氏および同社の社員の殺害を呼びかけるといった事件も生じている。

 このようなアノニマスによるISILに対する反撃も興味深いが、より事態を複雑化してしまうのは、こうしたアカウントや関連サイトの存在もまた、ISILの生態を調査する上で重要な資料であるという面だ。過激派集団の所在と生態を調査するには、(1)通信傍受(2)スパイ活動(3)ウェブ上の情報収集が必要になる。そこでは、生態を知るために敢えて泳がせていたウェブサイトが破壊されてしまうことで失う情報も多いというわけだ。若者を勧誘するといったTwitterアカウント等は削除が適切だが、情報収集のためのサイトが破壊されてしまうと、中東専門家や各国の軍などには損失も大きい。これをどう判断するかは難しい。これもまた、ウェブ上での様々な思惑が複雑に交差していることの現れである。

まだまだ続くサイバー空間の闘争

 今回はこれまでのまとめとして網羅的に情報を紹介した。様々なISILないしその支持団体の活動を世界はどのように見るだろうか。稚拙であると思うか、怖いと感じるか。あるいは彼らを羨望の眼差しで捉えるか。これらの事件によって世界中の認識がどのように変化するか、定期的なデータ取得をすることで、ISILのによるPR活動の効果の有無を確認することができる。とはいえ、事態は何一つ収束していない。今後も問題の推移に我々は注目していかなければならないだろう。

  
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