サイバー空間の権力論

2015年5月1日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 さらにサイバーカリフは4月に、フランスの国際放送局「TV5MONDE」をハッキング。同局が世界に向けて放映する11チャンネルの放送がなんと数時間も中止にするほどの被害が生じている。TwitterアカウントやHPの改ざんといった程度であれば、注意すれば未然に防げたり、損害自体も少なくて済むが、テレビ局の社内システムが一時的にせよすべて乗っ取られるなど、今回の攻撃は規模が大きい。

 この事件に関しては、のちの報道から、事前に「TV5MONDE」の全ジャーナリストにフィッシングメールが送られており、その中の数人が添付ファイルないしリンクをクリックしたことでウイルスに感染。その後社内のシステムに侵入されたことがわかっている。

 とはいえ、上述のようにISILと関連があるかが疑わしいケースもある。やや余談になるが、フットサルチームなどの活動を行うスポーツクラブ「府中アスレティックFC」のサイトをはじめとした8つの国内サイトが今年の3月、ISILによるハッキングを示す画像に改ざんされた。これらのサイトとISILの関係性がないことから、犯人はISIL自身というよりも愉快犯による可能性が高いが、いずれにせよ第三者やISILの支援者等から無作為にウェブの脆弱性を突いたハッキングが行われる可能性もある。もっとも、こうした攻撃はISILに関係なく普段から行われているのであり、定期的なセキュリティチェックで対応可能だ。

目立ち始めたISILへのカウンター

 いずれにせよこれらの活動に対抗する形で、ISIL反対派の活動も目立ってきている。最後にカウンターの例も参照しよう。

 本連載でも扱った国際的抗議集団の「アノニマス」は、ISILに対する明確な敵対宣言をしている。今年の2月にはTwitterアカウント約800件をはじめとしたSNSアカウント等を公開し、その多くをアカウント停止にしている。彼らがISILに対してサイバー攻撃を行ったとの報道が多いが、その内容の多くは、実はアノニマスたちが当該アカウントをSNSの管理会社(TwitterならTwitter社)に違反報告を行うことで閉鎖に追い込むという、手作業の人海戦術にある(SNSには利用規約があり、公序良俗に反するものや、一方的な宣伝目的のアカウントは規約に違反するとしてアカウント削除の対象になる)。

 アノニマスは声明の中でISILに対する宣言の他にも、Twitter社に対してより多くの仕事、すなわちISIL関連のアカウントを自分たちで削除しろ、とも述べている。

 アノニマスはその後もISIL関連のウェブサイトに対するサイバー攻撃や、関連企業の情報等を公開し、Twitterアカウントの公開も現在に至るまで数万件を超えており、現在も作戦は継続されている。

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