WEDGE REPORT

2015年5月25日

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宮家邦彦 (みやけ・くにひこ)

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1978年東京大学法学部卒業後、外務省入省。日米安全保障条約課長、在中国大使館公使などを歴任し、2005年退職。総理公邸連絡調整官などを歴任し、09年より現職。

2015年度の外務省予算において、戦略的対外発信の予算は対前年度比500億円増に。カネがついた今だからこそ「官民連携」「大義名分」「共通理解」、3つのキーワードが鍵となる。

 日本外交においてパブリック・ディプロマシー(Public Diplomacy)なる概念が導入されてから、早10年になる。2012年には外務省に広報文化外交戦略課(Public Diplomacy Strategy Division)が新設された。広報文化外交とは、「民間とも連携し、外国国民・世論に直接働きかける」外交だという。だが、この言葉、今も巷では混乱が見られる。

 ウェブ上の定義も様々だ。一般には、「官民連携により広報・文化交流を通じて外国の一般市民・世論に働きかける外交」とされる。しかし、今も一部には、「交渉経過を公開する外交」とか、NGOなどによる「民間外交」などと混同する向きすらある。やはり、日本ではまだまだ発展途上のコンセプトなのだろう。

 特に気になるのは「広報文化外交」それ自体を目的化するような議論だ。その典型が、「イメージを競う国家間ゲームにいかに勝利するか」といった論調である。広報文化外交の本質は勝ち負けを競う「ゲーム」ではない。相手国のネガティブな宣伝を「言い負かす」ような情報発信だけでは本来の目的など達成できないからだ。

 確かに、戦後70年間、外務省だけでなく、政治レベルでも、相手を「言い負かす」以前の正確な情報発信に消極的だった時期があったことは否定できない。

 筆者も15年前、北京の日本大使館で短いながらも広報文化を担当したことがあり、七転八倒しながら中国の学生や一般大衆に対する働きかけを実際に試みたことがある。今回は以上のような視点から日本のパブリック・ディプロマシーの現状を概観してみたい。

どうやってカネを使うか

(画像:istock)

 残念ながら、これまで日本の対外情報発信活動は、ヒト、モノ、カネ、全ての面で弱体だった。しかし、第2次安倍内閣の誕生で状況は激変する。15年度予算では戦略的対外発信強化が重点項目となり、予算規模も対前年度比約500億円増の約700億円となった。しかし、カネが増えただけでは立派な外交はできない。

 カネがついた今だからこそ、これを効果的に活用すべきだ。予算という蜜が増えれば、それに群がるミツバチも増える。これを上手に使うためには良い意味での「悪知恵」が必要だ。今後日本の対外情報発信を成功させる鍵は、「官民連携」、「大義名分」、「共通理解」という3つのキーワードに集約されるだろう。

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