ヒットメーカーの舞台裏

2015年7月24日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 スポンジや布に含ませて、浴室内の鏡や水道栓などに付く水アカを落とす。洗剤のベンチャー企業、アスター(秋田県大仙市)の社長で自称「洗剤職人」の茂木和哉(39歳)が開発し、自身の名前を商標とした。2013年11月に大手量販店やネット経由で発売、テレビ各局で紹介されたこともあり、増産体制を整えたこの春まで品薄状態が続いた。

水アカを分解するスルファミン酸と研磨剤の相乗効果で洗浄力を高めている

 浴室のほか、コーティングしていない鍋やフライパン、さらに便器などにも使える。200ミリリットルで税込み2036円と、この種の洗剤としては安くはないものの、個人的には価格に見合った洗浄力を発揮してくれるとの感想だ。

 主成分は研磨剤と、金属のさび落としなどにも使われる酸性成分の「スルファミン酸」。茂木によると、水アカは水に溶け込んでいるカルシウムや鉄分といったミネラルが乾燥を繰り返すうちにできる「アルカリ性の固体の汚れ」だそうだ。

 衣類の皮脂汚れなど水に溶ける酸性の汚れとは性質が異なり、放置しておくと落ちにくい頑固な汚れになりやすい。「茂木和哉」の確かな洗浄力にはサラリーマン時代を含めると20年近い「洗剤職人」のノウハウを注ぎ込んだ。

 短大を出た茂木が最初に就職したのは秋田県内の化学工業薬品の販売会社で、営業を担当した。在学中に「毒物劇物取扱責任者」の資格を取得したことが、就職につながった。洗剤との出会いはこの会社で、やがて営業に従事しながら洗剤の調合など、実質的な製品開発も行うようになっていった。

 入社9年目に転機が訪れ、取引先だった北海道の洗剤メーカーにスカウトされた。この頃には「起業」への想いが膨らんでおり、新たな会社では「しっかり学ぼう」との決意も秘めて赴任した。本職は営業だったが、オフタイムなどに頻繁に工場に足を運び、「効率化や品質確保といった生産の基礎」を独学で習得した。

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