WEDGE REPORT

2015年7月27日

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 現地の報道などによると、トルコは基地を米国に使用させる見返りに、シリア領内に限定的な緩衝地帯を設置するとの計画について米国から了承を取り付けるという“密約”を結んだようだ。緩衝地帯は長さ約100㌔、幅50㌔の広さ。トルコはこの一帯に、現在国内に収容している200万人に上るシリア人難民を戻す計画で、同時にエルドアン政権が懸念するシリアのクルド人の勢力拡大の防護壁にすることも狙っている。

 この米国との合意を受け、トルコ空軍のF16戦闘爆撃機が24日、シリア領内のISの拠点などを2波に渡って空爆した。トルコ軍機がシリアのIS勢力を空爆するのは初めだ。国境地帯にはトルコ軍の戦車などが集結しており、今後、緩衝地帯設置のため電撃的に越境攻撃することもあり得よう。

クルドとも戦端をひらく テロ激化の恐れ

 エルドアン政権はISに対する空爆と並行して、テロ組織として敵視するクルド人武装組織「クルド労働者党」(PKK)のイラクの拠点も空爆した。PKKとはこの2年間、和平交渉を続けてきたが、この空爆で交渉は完全に頓挫、トルコはISとPKKの2組織への軍事作戦に同時に踏み切るという賭けに出た形だ。

 しかしこの賭けが裏目に出る危険性もある。とりわけISはトルコ国内に6000人もの“休眠細胞”を持っているといわれ、エルドアン政権が軍事行動に踏み切ったことで、ISがこの休眠細胞を目覚めさせ、トルコ各地で報復テロを激化させる恐れが強まっている。こうしたことを懸念する同政権はテロリスト狩りに乗り出し、この2日間で約600人を拘束した。

 いずれにせよ、トルコの対IS政策の転換は「シリアの情勢を変える大きな要素になり得る」(米当局者)もので、アサド政権軍、反政府勢力、クルド人勢力、IS、国際テロ組織アルカイダ分派と5つ巴の戦いの構図が変わる可能性がある。英国も最近になって、シリア領内のISへの空爆に参戦し始めており、シリア情勢は一段と複雑化しそうな雲行きだ。 

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