トルコのエルドアン政権が過激派組織「イスラム国」(IS)に対する政策で大転換、空爆作戦を開始するなど軍事攻撃に踏み切り、米主導の有志連合にこれまで許してこなかった南部の空軍基地使用も容認した。この地域の軍事大国トルコの政策転換で、ISとの戦いは新たな段階に入った。
エルドアン政権と米国の密約説
エルドアン政権はこれまで、ISへの対応については慎重な姿勢に終始。北大西洋条約機構(NATO)の一員でありながら、軍事的な行動を控えてきた上、シリアへの外国人戦闘員流入を放置しているとして米欧から強い批判を浴びてきた。かつてのイラク戦争では使用させた南部のインジルリク空軍基地をIS空爆作戦に米国が使用することを拒んできた。
トルコのこうした慎重な方針は、同国が900㌔にも渡ってシリアと国境を接しており、軍事行動に出れば、容易にISの報復テロを招き、治安が悪化するのを懸念したこと、さらには米国とシリアのアサド政権をめぐる意見の対立が大きかったからである。
エルドアン政権は、ISとの戦いよりもアサド政権打倒を優先させるべきだとの考え。これに対して米国の最優先課題はISの壊滅で、アサド政権の打倒は二の次だ。両国は過去9カ月間に渡ってインジルリク基地の使用やアサド政権問題などについて協議を続けてきた。
エルドアン政権が今回、政策を転換したのは、20日に南部スルチでISの犯行と見られる自爆テロ(32人死亡)が発生、またその2日後にシリア国境のキリス検問所付近でIS側と初めて大規模な交戦に発展するなどISの動きが看過できないまでになってきた背景がある。
こうした緊張が高まる中、エルドアン、オバマ両大統領がこのほど、1時間にわたって電話会談し、インジルリク基地の使用容認などで合意した。この他、両首脳は、トルコ軍が米主導の有志連合の空爆の精度を上げるため、地上誘導員をシリア領内に派遣することでも合意した。シリア空爆の米軍機はこれまで、ペルシャ湾のバーレーンなどから発進しており、インジルリク基地から飛び立てば、作戦時間は大幅に伸びることになる。