朝11時。小野塚誠さん(仮名・30歳)は目覚めると、まずは掛け布団を脇によける。そのまま上半身だけ身を起こすと、目の前に開いてあるパソコンに向かう。
4畳半の和室は、畳の上に直接置かれたデスクと積み重ねられたクリアケースと、壁全面にしつらえられた本棚でいっぱいいっぱいで、ベッドを置くスペースはない。しかし、作業しながら、眠くなったらすぐ眠りにつける今のスタイルを小野塚さんは気に入っている。
急ぎのメールに返信すると、洗面所に行き、洗濯機を回す。
手を動かしながら目を向けるのは、壁に吊るされたホワイトボードだ。
そこには、「玄関」「風呂」「トイレ」などの掃除する場所と、当番者の苗字が書いてある。
名前は、小野塚さんを入れて5つ。そう、小野塚さんは今、5人でルームシェアをしているのだ。
ルームシェアという“つながり”
未婚率が上がり続ける中、独身同士で集まると、こんな話が出ることがあるはずだ。
「このままずっと独身だったら、老後は同じ家に住もうね――」
一緒に住むメンバーは、親友2人の場合もあるし、グループ数人という場合もある。「同性がいい」という人もいれば、「男女で」ということもあるだろう。
いずれにしても、「今はまだだけど……」という前置きがあってのこの話、老後に限らず、「今」からスタートすると、どうなるのだろうか?
考えているうちに、「シェアハウスがあるじゃないか」と思いついた。
そこで、シェアハウスに住む人に取材を……と考えをめぐらせたところ、先の小野寺さんを思い出した。
都心の一軒家を“シェア”
小野塚さんは2年前、働き方について取材したときに知り合ったフリーのアーチストさんで、都心のシェアハウスに住んでいる。アーチスト……といってもいわゆる芸術作品を作るのではなく、既存のメディアに独自の解釈を加えて発表したりする。
取材を申し込むと、「家に来ますか?」という返事。そこで、見学をさせてもらいつつ、話を聞かせてもらうことにした。