2024年4月26日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年11月13日

 「不均衡是正」の考え方には反対しにくい。しかし、それは経常黒字国にとって一段と内需拡大策を膨らませる危険性をはらんでいる。しかも、80年代日本とドイツに期待された世界経済の機関車役のように、大きな経常黒字を抱える中国などに世界経済の牽引役を期待するのはもっともなようにも見える。

 しかし、行き過ぎれば、米国がいままで金融バブルで世界経済を牽引してきたツケを中国の資産バブルにたらい回しすることになり、結果的には世界経済の健全な成長とはならなくなる。G20での工程表や相互監視が合理的に見えようとも、基本は各国が地道に持続性ある新たな成長モデルを見出していくしかない。

外需と財政赤字に頼らない成長モデルを

 日本についても同じことが言える。輸出主導の成長が行き詰まり、内需停滞を財政支出で支えてきたツケが出たのが、現在の日本経済であり、あまりに巨額な財政赤字である。世界経済が、均衡の取れた持続性のある成長モデルを見出さなければならない中で、日本も、いままでのバランスが取れない成長パターンを見直さなければならないのは当然だろう。

 財政赤字を拡大させない形で内需を拡大していく命題を前にすると、足元の景気回復がいかに本物に程遠いかが今一度理解できよう。財政赤字拡大を伴う子ども手当の実施も、景気回復の持続になるとしても、本物に程遠いことには変わりない。

 少子高齢化が進むこれからの日本で均衡の取れた経済成長を遂げようと思えば、高齢化社会に合致するヘルスケアビジネスや温暖化対応ビジネスなどを花開かせるしかない。一方、地域経済や内需型企業などにも、輸出企業や中央政府の財源・支援に依存しない経済自立が求められることは当然である。

 均衡の取れた経済成長が求められているということは、いかに自活するかを求められていることでもある。もちろん、日本のような無資源国は完全自活などできない。しかし、成長する海外経済や財政支出といった事柄にばかり自らの成長の前提を求める前に、甘えを排して自らが成長する努力を十分に行っているかを自問する必要もあるのではないだろうか。

 G20での合意が、ふたたび80年代のようなバブル経済を世界的に再来させることにつながっては困る。しかし、外需と財政支出に大きく依存して成長してきた日本にとっては、多くの企業や個人の経済的自立への努力不足を指摘されているように見える。

 

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