2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月18日

 オバマ大統領がここで述べているサイバーセキュリティ大幅強化策は、オバマ大統領が2月9日に議会に提出した2017年会計年度の予算教書で、目玉の一つとして提案されています。

 中国やロシアなどからとみられるサイバー攻撃は、米国にとって現実の脅威となっています。米企業に対する企業機密窃取のためのサイバー攻撃に加え、国防総省や人事管理局などがすでに大規模なサイバー攻撃を受けています。

 ホワイトハウスのサイバーセキュリティ調整官のMichael Danielは記者会見で、「サイバーセキュリティ国家行動計画」(以下「計画」)は、個々のサイバー攻撃ではなく、サイバーの脅威の基本的課題に対処しようとするものである、と述べたと報じられています。

 基本的課題の一つは人材です。サイバーセキュリティには高度の知識を持った専門家が必要ですが、現在連邦政府には専門家が不足していて、養成が急務と言われています。今回の「計画」で、政府全体のサイバー専門家集団を作る、とされているのは、そのニーズに応えるものでしょう。

サイバーセキュリティ強化は超党派の課題

 「計画」は、オバマ大統領らしく国民の目線でのサイバーセキュリティ強化が謳われている印象がありますが、サイバーインフラの保護が国家安全保障上の最優先事項であるという時、最も重要なのは、言うまでもなく軍事関連です。その意味で国防総省のサイバー司令部や国家安全保障局、CIAといった機関のサイバーセキュリティの強化は、喫緊の課題であります。ただし、これらは当然のことながら、あまり公には論じられるものではありません。

 予算教書を踏まえての来年度予算案の議会審議は、共和党の姿勢に加えて、大統領選挙を控えていることもあり、容易には進まないでしょうが、サイバーセキュリティの大幅強化は超党派の課題です。関連予算については、共和党はさして抵抗しないのではないかと思われます。

 サイバーセキュリティは、日本にとっても重要な課題です。日本も、この際思い切って予算を増やすなど、一層本格的に取り組むべきでしょう。

  
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