2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月2日

 オバマ大統領がここで主張している内容は、従来の主張の繰り返しであり、特に新味はありません。しかし、正論は何度でも繰り返す必要があります。この段階でオバマ大統領が改めてこういう主張をワシントン・ポスト紙に寄稿したことには意味があります。

大統領候補者全員がTPPに反対

 共和党は大体自由貿易支持で、TPPには賛成の人が多いですが、クルーズ氏の撤退で共和党の大統領候補にほぼ決まったと思われるトランプ氏はTPPに反対です。民主党のサンダース氏もTPP反対です。ヒラリー・クリントンは従来TPP支持でしたが、民主党の指名獲得の必要性から、今のままのTPPには賛成しがたいと言っています。こういう中で、オバマ大統領としては、改めてTPPのメリットを訴えておきたいと思ったのでしょう。

 大統領選挙終了までに米国がTPP批准をすることは困難ではないかと思われますが、米国が批准しないと、発効要件(参加国のGDPの85%の国の批准)が満たされず、せっかくの交渉成果が無に帰してしまいます。オバマ大統領の任期は来年1月20日までです。その任期中にオバマ大統領には、ぜひとも議会を説得し、批准まで終えていただきたいと思います。

 次期大統領の可能性が高いヒラリー・クリントン政権まで先延ばしすると、選挙中の発言に縛られて、格好をつけるための再交渉などの声が出て、微妙なバランスでできている協定が壊れかねません。

 日本としても、早く批准し、もう後戻りはできないという状況を早く作ることがオバマを支援すること、またはクリントンが選挙中の発言に縛られないことを促すことになるのではないかと思われます。

  
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