前向きに読み解く経済の裏側

2016年8月29日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 バブル期というと、華やかな時代で、皆が贅沢をしていた印象が強いと思いますが、今の実質GDP(物価上昇率調整後のGDP、数量ベースのGDP)は、なんとバブル期(日経平均が4万円近かった当時)の1.3倍もあるのです。GDPは国内総生産ですから、当時の1.3倍のモノ(本稿では財およびサービスを指すものとします)が生産され、その6割弱が消費されているのです。私達の生活レベルは、バブル期以上なのです。実感と違うかもしれませんが、事実は事実としてしっかり認識しましょう。

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実質GDPとは、国内で作られたモノの量の統計
経済初心者向け解説

 GDP統計は、国内で作られたモノを合計した統計です。各社に売値から仕入れ値を差し引いた付加価値(自分で作り出したモノの金額)を聞いて合計して作ります。部品会社が30万円の部品を作り、組み立て加工メーカーがそれを仕入れて100万円の自動車を作り、自動車販売会社がそれを仕入れて120万円で顧客に売ったとします。部品会社は30万円、組み立て加工メーカーは70万円、販売会社は20万円の付加価値ですから、合計したGDPは120万円になります。

 GDP統計の作り方は他にもあります。消費者などに「何円の自動車を買いましたか?」と聞いて合計するのです。作られた自動車と買われた自動車は基本的に同じ金額ですから、両者の結果は同じになるはずです。輸出された自動車については税関で統計を見せてもらう、等の追加作業は当然必要ですが。

 GDP統計は、様々な使われ方をしますが、景気との関係では「実質GDPの成長率(=経済成長率)」が論じられます。GDPが2倍になるということは、日本中で作られたモノの量が2倍になるということですから、雇われる人の数も2倍になるでしょう。そうなれば、失業者が減って景気は良くなります。

 しかし、GDPが2倍になった理由が「インフレで自動車の価格が2倍になったから」というのでは、生産量が増えるわけではないので、雇用も増えず、失業も減らず、景気も良くなりません。そこで、GDPの増加率から物価上昇率を差し引いた値が経済成長率(厳密には実質経済成長率)として注目されるわけです。

 今ひとつ、生活水準を考える上でもGDPは重要です。作られたモノは原則として使われますから(売れそうだから作るので)、多くのモノが作られる国は豊かな国だ、と考えて良いでしょう。そこで、各国との比較や、過去との比較が重要になるわけです。今回は、過去(バブル期)と比較してみましょう。

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