実際に見聞した事例を整理すると北京や上海などの沿海州の大都市と比較して貧しい地域出身の庶民階級に海外進出熱が高まっているようだ。故郷と同じライフスタイルを維持して先進国で稼げば手元にお金が残るという仕組みである。そして中国で多少なりともお金を貯めて元手をつくり先進国で最低限の固定資本投資で資金回転率の高い商売を志向するビジネスモデルだ。
ネットを閲覧すると数年前の時点でも“改革開放後国外に移住した中国大陸公民”は400万人以上。そのうち、海外永住を志向しているのは200万人以上という。
所管の外務省や国務院華僑事務局は非正規移住を含め毎年約40万人が海外に移住していると把握しているようだ。米国、カナダ、豪州への合法的移民は年間それぞれ約10万人。2014年の時点で海外在住者は米国130万、ロシア50万、日本40万、カナダ40万、フランス30万、豪州17万、英国・独・イタリア・ブラジル・スペイン・韓国・シンガポール、フィリピン・NZ・南ア、各10万という数字もある。
庶民階層の海外進出を許容する中国共産党の狙いは
人口侵略で他国または他国の領土を実質的に乗っ取るのが共産党指導部の深慮遠謀ではないだろうか。経済力の向上に合わせてパスポート発行の要件を緩和して庶民の海外進出を容認・誘導してきたのではないか。
当面の狙いは国内の経済格差拡大に対する庶民の不満緩和、海外における華人(漢民族)ネットワークの強化であろう。武力を背景にした領土拡大と並行して人口侵略により平和裏に世界における影響力を強化するという超長期戦略である。
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