海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月30日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

インサイダーの中のインサイダー

 ルワンドスキー・マナフォート両氏の更迭に加えて、トランプ氏の副大統領候補の指名にもクシュナー氏が絡んでいました。クリス・クリスティニュージャージー州知事は共和党候補指名争いから撤退すると、即座にトランプ候補(当時)を支持表明しました。それにもかかわらず、クシュナー氏はトランプ候補の副大統領候補にマイク・ペンスインディアナ州知事を強く推したのです。その背景にはクシュナー氏の父親が脱税、選挙資金の違法献金及び証人への脅迫で2年間の実刑判決を受けたことがあると言われています。当時の検察官はクリスティ氏だったのです。父親の判決が下ったとき、クシュナー氏は検察官を目指してマンハッタン区の検察官の事務所でインターンをしておりましたが「法の解釈にはニュアンスがある」と実感し夢を捨てたのです。

 トランプ氏が次期大統領に決まると、政権移行チームの委員長であったクリスティ氏は副委員長に降格となったのです。強硬派で次期主席戦略官兼上級顧問のスティーブン・バノン氏が共和党主流派のクリスティ氏に反対したという報道がありますが、クシュナー氏の力が働いたという見方が有力です。同氏はトランプ氏のインサイダーの中のインサイダーであり、意思決定にかなりの影響力があると見て間違いありません。ではどうしてトランプ氏は娘婿を高く評価しているのでしょうか。

2人の類似点

 影の選対本部長とも言われたクシュナー氏は、トランプ氏の原稿の草稿、デジタル及びマーケティング戦略から人事まで幅広く関与していたと見られています。同氏は、義父のために情報を集めて直接報告する「情報収集役」を果たしているのです。

 選挙後、オバマ大統領がホワイトハウスにトランプ氏を招いて会談を行った際、同氏は長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏や次男エリック氏ではなく、クシュナー氏を側近として連れて行ったのです。レジデンス南側の庭を大統領補佐官デニス・マクドノー氏と歩く姿が撮影されています。安倍晋三首相がニューヨークのトランプタワーでトランプ氏と初めて会談をした際も、内閣広報室が公開した写真を見ますと、クシュナー氏とイバンカ氏が出迎えています。

 トランプ氏とクシュナー氏には類似点が存在しています。トランプ氏の父親フレッド氏は、ニューヨーク市クイーンズ区で主として中間所得層を対象に不動産開発事業に携わっていました。父親に仕込まれたトランプ氏は、マンハッタン区で富裕層を相手に事業を展開することを夢見てそれを実現させたのです。

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