今回のテーマは「トランプに影響力を行使する人物」です。現在トランプ政権の閣僚人事に焦点が当たっていますが、その一方で選対本部及び政権移行チームの人事まで介入してきた人物にも注目が集まっています。共和党ドナルド・トランプ次期米大統領の長女イバンカ氏の夫ジャレット・クシュナー氏(35)です。本稿では、事実上の選対本部長と呼ばれた同氏の役割とトランプ氏との関係について述べます。
人事権への介入
クシュナー氏は不動産開発事業を手がける「クシュナー・カンパニーズ」のCEO(最高経営責任者)です。本社はニューヨーク市の5番街にあります。同氏はハーバード大学を卒業し、その後ニューヨーク大学で経営学修士号と法務博士を取得しています。
イバンカ氏とは不動産開発事業のブローカーを通じて出会いました。1年間の交際後一旦は別れたのですが、ある日プライベートのパーティーで再会し、それがきっかけとなって結局結婚に至ったのです。クシュナー氏は正統派ユダヤ教徒で、イバンカ氏はユダヤ教に改宗しています。
さて、共和党候補指名争いでクシュナー氏の名前が上がったのは、トランプ陣営の初代選対本部長であったコーリー・ルワンドスキー氏が突然更迭になったときでした。「トランプはトランプらしく」をスローガンにして戦い、主流派の本命ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事や保守派のスコット・ウォーカーウィスコンシン州知事などを撤退に追い込んだ功績にもかかわらず、ルワンドスキー氏は事実上の解雇となったのです。その背景には、同氏がイバンカ氏とクシュナー氏と対立したからだと米メディアは報じています。
さらにトランプ氏が採用した大物政治コンサルタントポール・マナフォート氏が更迭された際も、同氏がイバンカ氏とクシュナー氏と不和になったのが原因だと見られています。2012年米大統領選挙において共和党候補ミット・ロムニー氏の5人の息子たちはここまで人事に介入していませんでした。