イノベーションの風を読む

2017年2月25日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 この連載(イノベーションの風を読む)の2015年6月の最初のコラム『Googleフォトがもたらすデジカメの終焉』で、日本のカメラメーカーへの期待とエールを込めて「カメラの再発明」を訴えました。しかし残念ながらカメラメーカーによる「カメラの再発明」は、今のところ(もしかするとこの先も)実現されていません。

 2月2日にSnapchatを運営する米国Snap社(昨年の9月にSnapchatから社名変更)が、ニューヨーク証券取引所にIPO(株式の上場)を申請しました。その申請書類の表紙には次の様な文が記載されています。

Snap Inc. is a camera company.
We believe that reinvesting the camera represents our greatest opportunity to improve the way people live and communicate.
Our products empower people to express themselves, live in the moment, learn about the world, and have fun together.

 翻訳すると「Snap社はカメラの会社です。私たちはカメラを再発明することによって、人々の生活やコミュニケーションの手段をより良いものにできると信じています。私たちの製品は人々が自己表現し、瞬間を生き、世界を知り、共に楽しむことを支援します」という感じになります。

 もちろんSnap社は(いわゆる)カメラの会社ではありません。昨年、サングラス型のビデオカメラSpectaclesを発売しましたが、それを指してハードウェアの会社だと言っているわけでもないでしょう。Snapchatという「すぐに消える写真や動画」でコミュニケーションを楽しむためのスマホアプリの会社が、若者を中心に1.58億人のデイリーアクティブユーザーを集めて、カメラを再発明するカメラの会社として株式上場を申請したのです。

(iStock)
 

苦戦する国内カメラメーカー

 国内では、カメラメーカーの苦境が深刻化しています。2月13日の産経新聞は、精密機器大手7社の2016年4~12月期連結決算で「円高が収益を押し下げ、6社が減収減益になり、半導体製造装置やデジタルカメラ事業で不振が続くニコンは最終赤字となった」と伝えました。

 2月13日に発表されたニコンの2017年3月期 第3四半期決算の資料によると、レンズ交換式デジタルカメラ(レンズ交換式デジカメ)、交換レンズ、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)の販売台数がいずれも前年同期を下回りました。レンズ交換式デジカメが310万台(前年同期比76.7%)でコンデジは315万台(同50.6%)と、特にコンデジの落ち込みが激しい。市場全体では、それぞれ1154万台(同88.5%)と1300万台(同62.5%)となっています。市場のピークは、レンズ交換式デジカメが2012年の2016万台、コンデジが2008年の1億1007万台でした(CIPA統計)。コンデジの市場はピーク時の12%までに縮小しています。

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