BBC News

2017年6月7日

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ペーター・ノイマン教授、シラズ・マハー博士キングス・コレッジ・ロンドン

ロンドン警視庁は、3日夜にロンドン中心部で7人を殺害し48人を負傷させた実行犯3人の名前を公表した。英国の過激主義者は、どうやって過激思想に染まっていくのか。BBCが、キングス・コレッジ・ロンドンの「過激化研究国際センター」の所長、ペーター・ノイマン教授と、副所長のシラズ・マハー博士に寄稿を依頼した(一部、文中敬称略)。


ロンドン橋での攻撃を受けて、テリーザ・メイ英首相はあらためて、テロリストの勧誘と過激化にインターネットが「安全な空間」として機能していると強調した。

私たちは5年前から、シリアとイラクに外国人戦闘員が流入する動きを追い続けてきた。欧米諸国から勧誘された800人近くについて、ソーシャルメディアでの足跡を含め、情報を集めてきた。

これまでの経験と研究から、過激化がオンラインのみで行われるのは実際には珍しく、インターネットの役割は複雑だという結果が得られている。

ロンドン橋攻撃の容疑者の一人について、過激化の経緯が断片的に分かっている。そこからも、問題はインターネットだけではないことがうかがえる。

容疑者のかつての友人がBBCエイジャン・ネットワークに対して、容疑者を警察に通報したのは、インターネットでアフマド・ムサ・ジブリル氏を支持するようになったからだと話した。

ジブリル氏は米ミシガン州在住のパレスチナ米国人だ。過激なイスラム指導者として、シリアのイスラム聖戦に欧米から参加する人たちからインターネットで大いに支持されている。

2014年に発表した報告のため、私たちは過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)が勧誘した戦闘員を多数調べた。その半数以上が、フェイスブックやツイッターでジブリル氏をフォローしていた。勧誘戦闘員たちにとっては、重要な存在なのだ。

ジブリル氏はフォロワーに対して、あからさまに暴力を先導したり、シリアでイスラム聖戦(ジハード)に参加するようはっきりと奨励したりはしていない。

その代わりにジブリル氏は、思想的なチアリーダーの役を演じている。シリアのバシャール・アル・アサド大統領に対抗する武装勢力の主要人物たちを支持し、戦いに参加しないことに罪悪感を抱かせようとしている。

しかし私たちの調査は、過激な思想信条の人間をテロリストに変える決定的な要因は、オンラインのプロパガンダではなく、オフラインの人間関係なのだと示す。

実行犯の少なくとも一人は、過激派の「アル・ムハジロン」ネットワークに参加していた可能性が、浮上している。中心にいるのはイスラム指導者アンジェム・チャウダリ受刑者だ(IS支持を呼びかけた罪で2016年に有罪となった)。

チャウダリもYouTubeにチャンネルを登録していた。しかし信奉者のほとんどは直接の知り合いで、面と向かって勧誘した相手だった。

集まってくる者たちにチャウダリが提供したのは、身内意識や帰属意識、仲間意識だった。

こうした意識は、「集団内の愛情(in-group love)」と呼ばれる、強力な人間同士の結びつきを作り出す。

インターネットは情報の拡散や、ISなどの組織のブランドづくりには重要な役割を果たす。しかし、現実世界にいるリクルーターの影響力や魅力にとって変わるものには、そうそうならない。

ほかのどの過激主義集団よりも、チャウダリ周辺のネットワークは英国内外ともに複数の攻撃に関わってきた。シリアでISに参加する何十人もの外国人戦闘員も同様だ。

過激なプロパガンダをインターネット会社が削除するのは、一つの策かもしれない。

しかしチャウダリのような説教師が何年もかけて、英国の街角でほとんど誰に反論されることもないまま、その主張を広めてきた今となっては、それだけでは前途は困難だ。

(英語記事 London attack: How are UK extremists radicalised?

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40183339

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