したたか者の流儀

2017年6月22日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

株主優待制度の問題点

 実際に総会に行くとクオカードが置いてある場合も多い。電車賃ということだろう。また、食品関係の企業の総会では商品詰め合わせがもらえる場合も多い。IR(株主対応)の部門は上場企業であれば、名称は異なるとはいえ全上場企業にある。加えて、きわめて親切な対応をしてくれる。

 株主と名乗れば、よく調べもせずに「株主さま、ご用件なんでしょうか?」と聞いてくれる。電話一本で直ぐに詳細を教えてくれるので、それを聞いてからネット市場に出せばよいのだ。 

 株主優待は学問的には、株主平等原則に違反するという議論がある。実際、かなりの剣幕で株主優待制度を問題にしている学者もいるようだ。優待の場合は株数で濃淡はあるが、株主総会入場券である議決権行使書は、最低限の単位株主だろうが、万株単位の株主だろうが会場での対応は一緒となる。

 例えば、議決権を1000円でネットで買って、クオカード1000円とみやげ物をもらう場合、総会そのものに参加したいわけではない。したがって「ピー逃げ」株主として、総会場に登場し直ちに退席する行動となるのだ。

 資本主義の根幹である株式会社の最高決定機関である株主総会がこのような形で運営されることに危惧を感じてしまうが、いかがであろうか。

 その昔、食い逃げ増資という言葉があった。企業が増資を強行した後、破綻することだ。昨今の話題の一つ、東芝がらみでウエスティング・ハウスのトップは20億円ほどの報酬を受け取り直ぐに去ったと出ていた。こちらは、経営者の「ピー逃げ」というわけだ。

 経営者はしっかり株を保有し、無限責任であるべきだという、アダム・スミス説を覚えている。アダム・スミス先生の学生たちは代返とも「ピー逃げ」とも無縁だったろう。ちなみに、先生の主著の一つは「The Theory of Moral Sentiments」(道徳感情論) だ。

  
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