「不動産投資を変え、社会を変える」をミッションに掲げて業界の先端を拓く、クリアル株式会社を率いる横田大造氏に志を聞いた。
誰でも少額から始められる不動産クラウドファンディング

──不動産投資の動きが活発化しています。どんな背景があるのでしょうか。
政府が掲げる「資産運用立国実現プラン」の後押しもあり、資産形成のニーズが活性化しています。その中で、ハイリスクハイリターンの株式投資とローリスクローリターンの現預金との間を埋める手段として、不動産投資の価値が見直されているのでしょう。つまり、ミドルリスクミドルリターン。土地や建物の価値を裏づけに、賃料収入といった安定的なインカムゲインを基礎とした運用が望めることが大きな利点です。実際、機関投資家などのプロは大半が、ポートフォリオに不動産を組み込んでいます。
とはいえ、高額で手続きも複雑な不動産投資は従来、個人にとっては敷居の高いものでした。その様相を一変させたのが、少額から手軽に始められる不動産クラウドファンディング(CF)です。
──インターネットを介して多くの出資者を一度に募るわけですね。
はい。運用事業者が投資家から集めた資金を元に不動産を購入、運用し、その家賃収入などを原資として配当をリターンする仕組みです。2017年の不動産特定共同事業法の改正でオンライン取引が可能になったのを機に、個人による不動産投資が一気に加速しました。国土交通省の発表によると、同法に基づく不動産CFの出資額は2023年度で約1007億円。4年間で30倍近くにも膨れ上がっているほどです。
9割の投資家がリピートする後悔させない投資の仕組み
──御社は不動産CFの牽引役として、2023年度の全出資額においてシェア2割を占めています。どのようなサービスを提供していますか。
1口1万円からの投資を可能にした不動産CFサービス「CREAL(クリアル)」を2018年から運営しています。動画、イラストを交えて多岐にわたる情報を開示していること、投資物件の管理・運用・売却すべてを我々プロに任せて手間が省けることが特長です。投資家数は約9万人、累計調達額は769億円を突破しました(2025年5月現在)。レジデンスやホテル、商業施設を中心に、平均出資額は1物件一人約30万円。おかげさまで元本割れをしたことはなく、リピート投資率は約90%に達しています。
──そのように高い満足度を支えている要因はどこにあるのでしょう。
不動産CFの優位性は3つの要素で決まると考えています。第一に商品開発力。不動産とファイナンスの専門家を備え、プロフェッショナルのネットワークを駆使して幅広い商品ラインアップを組成できること。第二にシステム開発力。優れたエンジニア・デザイナーにより、洗練されたUI/UXで各種DXシステムの開発を推進できること。最後はマーケティング。オンラインマーケを中心に先端的な手法で投資家ニーズを的確に捉える力です。当社はこれらを同時に満たす体制とメンバーを真っ先に整えました。
加えて、情報開示の徹底です。元来、不動産投資では売主と買主を隔てる「情報の非対称性」が課題とされてきました。この解消に向け、動画による物件紹介や、不動産鑑定士による第三者評価、リターンシミュレーション、リスク解説、近隣不動産の資料・売却事例など、あらゆる情報を公開しています。また、すべての案件に対して当社が共同出資者となり、一定のリスクを負うことで投資家への配当を優先する「優先劣後方式」を採用しています。
デジタルの力で築く資産運用プラットフォーム
──保育園や老人ホーム、病院といったESG不動産にも力を入れていますね。
そうした物件は社会的需要が高く、政府の補助金などもあるため安定した収益が望めるのに、これまで資金調達が困難な状況にありました。従来のキャピタルマーケットにおける資金の出し手、すなわち機関投資家等にとっては物件規模が小さく、投資実績も限られていたからです。私は銀行員時代にヘルスケアを専門としたREIT事業を立ち上げた際、そういったESG不動産の現実を知り、個人の志ある資金を裏づけとしたCFで一挙に間口を広げようと考えました。経済的リターンと社会的リターンを同時に満たす新しい投資の形です。
──今後の抱負をお聞かせください。
「不動産投資を変え、社会を変える」ことが我々の使命です。ITの力で誰もが気軽に投資できる「不動産投資の民主化」を実現したい。また、不動産CF業界の発展拡大に向け、信頼性・透明性・認知度の向上にも寄与したい。(一社)不動産クラウドファンディング協会を設立したのもそのためです。
事業としては、企業・個人へのプライベートクレジットや航空機、ヘッジファンド、PEファンドなど、不動産以外にも対象を広げ、1つのプラットフォームで多彩な資産運用を可能にするサービスを築くことが目標です。すなわち、不動産投資に限られない「資産運用全般の民主化」を実現したいともくろんでいます。そうであればこそ、1100兆円にも上る個人の現預金を動かす資産運用立国が実現できるのだと思います。