2026年5月25日(月)

アイコニア・ホスピタリティ

2026年5月25日

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北海道から沖縄まで日本全国180棟超の施設を運営し、業界トップクラスの運営客室数を誇るアイコニア・ホスピタリティ。旅の目的に合わせて、さまざまな価格帯、コンセプトのホテルを展開していることを特徴とし、ホテルニューアカオの再生事業を始め、2025年には大型リゾート施設であるスパリゾートハワイアンズやフェニックス・シーガイア・リゾートの再構築と運営にも着手している。代表取締役会長の山本俊祐氏に、同社が成長を続けている背景や課題点、そして今後の戦略と展望についてお話を伺った。

 

総合ホテル運営会社として地域と密接な連携を行い 記憶に残る宿泊を提供

―アイコニア・ホスピタリティの現状と経営の基本方針を教えてくださいー

1999年にウィークリーマンション事業からスタートし、中長期滞在型の宿泊施設やビジネスホテルを展開していましたが、2012年にフォートレス・インベストメント・グループの傘下になりました。そこから宿泊特化、フルサービスホテル、リゾート、旅館とさまざまなタイプのホテルを運営するようになり、今では日本最大の総合ホテル運営会社としてビジネスを展開しています。不動産オーナー様や同業者からは運営力のある会社としてご認識いただいており、消費者の方たちからはどこに泊まっても快適である、ということを基本方針として経営を行なっています。

 

1973年の開業後、熱海のシンボリックな存在として親しまれてきた「ホテルニューアカオ」。アイコニア・ホスピタリティに事業譲渡され、2023年に営業再開。あえて昭和の香りを色濃く残したホテルに多くの人が訪れている。
 
 

―2025年に社名をアイコニア・ホスピタリティに変更されました。その意図はどのようなことでしょうか?―

旧社名のままでは現在の我々の取り組みを伝えきれないと感じ、社名をアイコニア・ホスピタリティとしました。「アイコニア」は地域のアイコンとなるような宿泊施設を運営し、お客様にアイコニックな記憶に残る体験を提供するという思いを込めた造語です。「ホスピタリティ」にはお客様が期待されていることにしっかりと応え、さらにオーセンティックな体験をプラスして思い出に残る忘れられない宿泊を提供することを意味しています。この社名に違わぬよう、一軒一軒、丁寧に取り組んでいくことを運営方針としています。

 

―特にホテルの再構築の成功に注目を集めていますが?―

我々がホテルのリニューアルを行う際には、「その土地に根差しているハードがどこに行こうとしているのだろうか?」「訪れた旅行者は何を求めているのだろうか?」「どのような体験をしたいのだろうか?」……、さまざまなことを検討していきます。その上で現実的に何ができるのかをボトムアップで、毎回0から構築していくことが特徴です。2022年から運営を開始したホテルニューアカオをはじめ、かんぽの宿をリブランドした亀の井ホテルなど、それぞれが持つ歴史を土台としながら、食や観光、体験など地域の特性を生かしています。

 

2025年にリニューアルを手がけたスパリゾートハワイアンズ。「夢の島ハワイ」をイメージし、フラダンスや日本最大級の露天風呂などが楽しめる日本初のテーマパークとして1966年に開業した。

 

―スパリゾートハワイアンズの取り組みについてその背景をお聞かせください―

炭鉱閉山という会社存続の危機の中、炭鉱時代には「負の遺産」であった「温泉」を活かし、60年前にハワイをテーマにしたテーマパークをつくるという壮大な計画の元にできあがった施設がスパリゾートハワイアンズです。この施設の誕生と成功自体が奇跡のストーリーに満ちています。そこで運営に携わるにあたり、ただ単にハワイをテーマにしたウォーターパークではなく、60年間の歴史を感じる深みのあるリゾートにするべきであると結論づけました。単なるウォーターパークですと、小さいお子様がいないと行く機会が少なくなってしまいますが、若者同士やリタイア層が訪れたくなる温浴施設としてのコンテンツやテーマパーク性を強めるという2点に注力し、改装プロジェクトを進めました。

宮崎県の観光復興を目指し1994年にグランドオープンしたフェニックス・シーガイア・リゾート。黒松林に囲まれた広大な敷地の中で、自然・癒やし・美食など極上のひとときを楽しめる。
 

―フェニックス・シーガイア・リゾートの方はいかがでしょうか?―

シーガイアは日本のリゾート法1号案件で、海の近くの大自然の中に位置する巨大リゾートです。スポーツを楽しみ、自然を楽しめる太陽と海を感じるリゾートで、他に類を見ない大きな施設ですので、さまざまな客層の方がそれぞれの目的で楽しめる懐の深い施設を目指しています。ゴルフをはじめスポーツ目的の方、海のリゾート体験を楽しむカップル、3世代ファミリーなど、客層の多様化ということがシーガイアのターゲット戦略で、改装計画もそれに沿った新しいコンテンツを導入しています。

 

2026年からは愛犬と心から楽しめる旅をテーマにしたわんわんパラダイスの運営もスタートした。

 

 

―さらにわんわんパラダイスを2026年2月から運営を開始されていますが、こちらはどのような特徴があるのでしょうか?―

犬が家族の一員であるという方が増え、一緒に旅をしたいという需要が年々大きくなっています。ロビーやエレベーターでケージに愛犬を入れずに、ホテルに着いた瞬間からすべての施設をワンちゃんが使えるということが、わんわんパラダイスの特別なポイントです。専業チェーンを我々のグループに迎え入れたことによって、犬への接客方法を熟知しているスタッフが加わったことは大きなメリット。本当の犬好きのスタッフが接客すればオーナーさんも喜びますし、細かいノウハウを持っているのが強みとなっています。例えば改装する際に、犬の足にとって優しい床材はどういうものを使えばいいのか、清掃性を考えてどういった工夫をしたらいいのかなど、長い経験で積み上げてきた専門知識を取り入れられたことは事業推進の支えになりました。

 

スキルを身につけ好奇心を刺激する ホテルでの仕事の魅力

―運営ホテルが増えましたが、人材の確保はどのようにお考えでしょうか?―

人材はホテル業界にとって最大の課題です。少子化で若い働き手の数が減っており、その中で旅行業界に興味のある方を当社で確保するためには、キャリアの発展性、柔軟性ということを明確に示す必要があります。もちろん会社自体が成長しているということが大事ですし、働き方の柔軟性の実現も必須。そこでさまざまな地域、さまざまなタイプのホテルで働くことができたり、人生のライフステージに応じてスイッチングできる制度を導入しています。また、東京の本社ではマーケティングやレベニューマネジメントをはじめ多様な部門があり、スキルを磨くというキャリアパスが可能です。

 

―専門職である料理やサービス部門ではどのような対応をされていますか?―

ホテル会社に勤めても町場のレストランと同等以上の面白い仕事ができるということを若い料理人に示したいと考えています。実力があり著名なベテランシェフが全国を巡回してメニュー開発や若いシェフのトレーニングをしたり、話題のレストランに足を運んで実際に体験して料理づくりのヒントにしてもらう機会などを設けています。鉄板焼きシェフやフグの調理師など、特別なスキルを持つ人が全国で増えてきて、さまざまな料理を提供できるようになり私もワクワクしています。スパリゾートハワイアンズのメンバーに関しては、実際にハワイを訪れ現地のサービススタイルを直接見たり、ハワイ料理を食べることでローカルの雰囲気を肌で感じてもらうなど、五感で学んだ「生きた経験」をビジネスの現場で発揮していただいています。

 

―採用に関して特別な施策は行われていますか?―

旅行業、宿泊業が好きで、理系的・定量的な分析ができるマインドセットの方がホテル業界で仕事を探す時に、コンサルティング会社や不動産投資会社を選択することが多く見受けられます。そこでホテルの仕事の面白さに気づいてもらい、優秀な方に来ていただくために、初任給50万円・3年間の契約社員という待遇で、コンサルティング会社と同等以上の経験を積めるようなプログラムMELP制度を導入しました。将来は幹部候補として引き続き弊社で活躍していただきたいという思いを込め制度化し、さっそくMELPの第一号社員が活躍しています。

※MIRAI Executive Leadership Pathway(ハイポテンシャル人材採用)の略。

 
 

 

―海外の方の人材採用についてはいかがでしょうか?ー

遠隔地や人口が少ないところに景勝地や観光地がある場合、ホテルを運営しても働いてくれる日本人が少ないという現実があります。そのため、2023年には千葉県成田市に「成田・ホスピタリティ・アカデミー」を開講しました。技能実習生を自社で法定研修し、独自のトレーニングに取り組んでいます。本年は3年前に迎え入れたベトナムの実習一期生が技能実習を終えました。引き続き多くの方が弊社で働くことを希望され嬉しく思っています。

 

 

 

―スパリゾートハワイアンズがある福島県いわき市へのふるさと納税を通じた寄附活動にも取り組まれていますが、どのようなお考えでしょうか?―

スパリゾートハワイアンズの運営を開始し、いわき市への理解を深める中で、常磐炭鉱およびいわき市の文化・産業遺産の素晴らしさと歴史に共感しました。「常磐炭鉱発祥の地を巡る旅」として常磐炭鉱の遺構跡地を巡るヘリテージツアーをリニューアルするなど、さまざまな企画を実施するなか、今後も末長くこの事業を継承していただきたいという思いから、企業版ふるさと納税を活用した寄附をいたしました。いわき市は首都圏のために石炭を掘って列車で運んでいた時代から、日本のエネルギーを支えてきた長い歴史を持っています。そのストーリーを学生の方々に修学旅行などで知っていただいたり、観光とともに学んでいただけるいい機会だと思っています。さらに語り部の育成や資料の編集などに活用していただきたいという思いもあり、企業版ふるさと納税制度を使って寄附いたしました。また、本年度も松林の保全活動を目的とし、宮崎県と宮崎市へも同様の制度を使い寄付いたしました。

 

―地元コミュニティとはどのような連携モデルを構築されているのでしょうか?―

宿泊施設という1つの点としての存在だけではなく、周りの地域や少し離れたところの観光地などと線と面で結んでいきたいという思いから、弊社は旅行業免許を取得しました。我々のホテルでは、地元の食材の比率を可能な限り高めたいと考えています。地域の名物はもちろんですが、地元の面白いお店のB級グルメや居酒屋メニューなど面白いものを発掘していくことも積極的に行なっています。スパリゾートハワイアンズでは、福島の大衆魚であるメヒカリを使った炊き込みご飯やなみえ焼きそば、白河ラーメンなど、ハワイアンメニューだけでなく福島を知ってもらうグルメもご用意しています。

 

―御社の次なるステップについて山本会長はどのようにお考えでしょうか?ー

我々が持っているノウハウが各案件にどう当てはめることができるか、ということを見極めて事業は進めていますが、引き続きリゾートや旅館、愛犬と泊まれるホテルは日本のホテル業界の中で存在感が大きくなっていくと思います。また私個人としては、日本の観光資源としての日本酒とワインに注目しています。日本酒の酒蔵の見学や現地でしか楽しめない貴重なお酒と宿泊施設を組み合わせた「酒蔵ツーリズム」や「ワイナリーツーリズム」の企画なども開発していきたいと考えています。

 

―御社が直面している課題とその対応策はどのようなものでしょうか?―

先にもお話しした通り人員の確保が、やはり一番の課題です。解決のためには、正社員の定着率を高めることが必須。そのため、「正社員を大事にする」「キャリアの発展の機会をさまざま用意する」ことが一番の解決策と考えます。またホテル運営に関してはDX化を進めています。特にお客様にはなるべくストレスを感じない宿泊体験をしていただくため、チェックイン・チェックアウトをスムースにすることなどに注力しています。さらに会員制度GoToPassを拡充することで、アイコニア・ホスピタリティのファンを増やしリピートしていただく施策に取り組んでいます。

 

―2025年からスタートされたGoToPassですが反響はいかがでしょうか?―

ポイント還元としての経済的メリットだけではなく、GoToPassのメンバーであることによって面白い情報や役に立つメルマガが読めるといった、魅力あるコンテンツを目指しています。GoToPassが旅好きのコミュニティになり、我々の発信する情報に興味持っていただいて、コアなユーザーを増やしてくことが目標です。落語家さんの真打昇進祝賀会寄席に会員様をご招待したり、熊野古道などの会員限定旅行ツアー、温泉名人の社員によるマニアックな温泉ガイドなど、さまざまな企画を発信してファンを増やしたいと考えています。

 

―最後になりますが、山本会長が考えるホテル業の魅力とはなんでしょうか?―

ホテリエは接客が好き、人と会うのが好きという方が当然多い職業です。その上で「人はなぜそういった行動をするのだろう」「なぜそのホテルに泊まったんだろう」「なぜ今日この料金を払ってくれているのだろう」「なぜこのメニューを注文してあちらを頼まなかったんだろう」など、考えることが好きなキュリアスな人が向いているのがホテル業で、それが魅力だと思います。レべニューマネジメントやマーケティングは理系の分野ですし、どのように予算を使っていくのか、どういう客層を取ろうとしているのかを定量的に考える必要があります。また新規出店の市場分析やプロジェクトづくりなどは感覚論ではなく数字でちゃんと説明できることが求められます。地域再生やベンチャー的な仕事に興味がある人にも魅力のある職業ですので、自分の可能性を発揮して、さまざまなことにトライしたい方はぜひホテル業を志していただければと思います。

 

アイコニア・ホスピタリティ株式会社 代表取締役会長

山本俊祐 氏

INSEADにて経営学修士(MBA)を取得。早稲田大学法学部卒業。JPモルガン証券の不動産ファイナンス部、UBS証券株式会社の企業金融本部に勤務などを経て、イシン・ホテルズ・グループの投資担当ヴァイス・プレジデントを務める。2011年にフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社(以下、フォートレス)に入社。

2017年よりアイコニア・ホスピタリティ株式会社の代表取締役会長。現在、フォートレスの日本におけるホテル投資業務を統括。