2026年10月14日(水)

AKKODiS

2026年10月14日

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日本発の次世代光通信技術「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」が通信の未来を変えようとしている。「ChatGPT」など生成AI(人工知能)の広がりに伴い、大量の電力消費が地球温暖化に拍車をかけ、大きな社会問題となっている。そんなデジタル時代の課題を解決するのがNTTの提唱した「通信容量125倍、電力効率100倍、通信遅延200分の1」というIOWNの光技術だ。その新しい技術の社会実装を促そうとしている会社が世界最大の「人財」サービス企業、Adecco Group(アデコグループ)傘下のデジタルエンジニアリングコンサルティング会社、AKKODiS(アコーディス)コンサルティングである。同社のIOWN推進イベントの模様を情報通信分野の調査会社、MM総研の関口和一理事長が取材した。

 

高速・低遅延の光通信で心臓の鼓動を伝送

 「心臓の鼓動がこんなにリアルに伝わるなんて」――。2026年9月18日、東京・芝浦にあるAKKODiSコンサルティングの本社は多くの来場者で賑わっていた。同社が1年3カ月前に設けたIOWNの推進施設「AKKODiS IOWN FUSION BASE」で開かれた「IOWN FUSION EXPERIENCE 2026」のイベントだ。2025年に開かれた「大阪・関西万博」のNTTパビリオンで使われていた「ふれあう伝話」の通信装置を会場に持ち込み、実際に参加者に試してもらっていた。

 「ふれあう伝話」とは音声や映像だけでなく、手の触覚や心臓の鼓動など人間の存在やぬくもりを伝えるNTTの開発したコミュニケーションツールだ。万博では会場の夢洲と約30km離れた関西国際空港をIOWN の「オール・フォトニクス・ネットワーク(APN)」でつなぎ、遅延なく情報を伝え、大きな話題となった。今回は大阪・京橋にあるNTT西日本のオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE (クイントブリッジ)」と、そこから約600km離れたAKKODiSの本社をつなぎ、ふれあう伝話のデモを行った。

 

APNを使ってNTT西日本の「クイントブリッジ」と接続

 「脱炭素社会を促すIOWNを実装するには、技術を支えるデジタル人財の育成、ユースケースの創出、グローバル展開の3つが重要だ」。AKKODiSコンサルティングの川崎健一郎社長は開会のあいさつで「AKKODiS IOWN FUSION BASE」を開設した狙いをこう語った。英語で「融合」を意味する「Fusion」という名前をつけたのは「この施設を通じ、IOWNを推進しようという人々の出会いや、関連する様々な技術の融合を促し、新しいイノベーションを創出する場にしたかったから」と説明した。

フィジカルAI時代の新たな通信プラットフォームに

 イベント会場には東西合わせ、通信、流通、建設、自動車、防衛・航空など様々な産業界の企業および自治体から約35社・団体、70人以上の参加者が訪れた。IOWNの推進母体としては国際的な「IOWN Global Forum」という組織があり、その代表を務めるNTTの川添雄彦チーフエグゼクティブフェローも登壇し、普及に向けたロードマップを説明した。「インターネットやクラウドの登場は様々なデジタル変革をもたらしたが、ロボットなどがネットワークにつながるフィジカルAIの時代は、機械が瞬時に連携できるよう通信の同期がとれる技術が重要になる」と強調、IOWNが新しいデジタル社会を支えるプラットフォームになると訴えた。

IOWNのロードマップについて語るIOWN Global Forumの川添雄彦代表

 イベント会場ではAKKODiSが開発したIOWNの人財研修プログラムも紹介された。超高速大容量、超低消費電力、超低遅延というIOWNの技術を理解し実装するには、既存の電気信号技術に加え、光電融合技術など新たな光技術の理解が欠かせない。そうした新しい知識を習得できる講座は大学や専門学校にはまだないため、AKKODiSが独自に研修プログラムを開発し、現場で働く技術者を再教育できるようにした。すでに約4000人が講座を受講し、IOWNが今後、グローバルに普及していけば、海外の技術者にも講座を展開していく計画だ。

 

「AKKODiS IOWN FUSION BASE」でIOWNの人財研修プログラムを紹介
 

IOWNの認知度向上やデジタル人財の育成を支援

 IOWNはもともとNTTの研究所から生まれた技術で、実装はNTT東西やNTTドコモ、NTTデータグループなどの各事業会社が担っている。技術の推進やユースケースづくりはIOWN Global Forumが進めている。だが一般ユーザーへの認知拡大やIOWN の知識を持つ技術者の育成はこれから本格化していく段階にある。こうした人財育成の領域で、NTTグループと歩調を合わせ、社会実装を加速化したいというのが川崎社長らの想いだ。IOWN Global Forumの川添代表も「IOWNの推進に向けたAKKODiSの取り組みには我々も感謝している」と話す。

 イベントでは「ふれあう伝話」などのデモの後、参加者によるレセプションが開かれた。乾杯のあいさつにはNTT研究企画部門の芝宏礼IOWN推進室長が登壇し、「IOWNはAI時代の社会課題解決を促す基盤であり、そうした技術をつくる人と使う人との共創を生むパートナーシップが非常に重要になる」と述べ、AKKODiSの取り組みに対し賛辞を贈った。

AKKODiSコンサルティング社長
川崎健一郎氏インタビュー

 
 AKKODiSコンサルティングのルーツは1997年創業の技術系人財派遣会社、ベンチャーセーフネット(後にVSN)だ。リーマンショックの後、MBO(経営者による買収)を経て、2012年にスイスにある世界最大の人財サービス会社、Adecco Groupの傘下に入った。同グループでデジタルエンジニアリングコンサルティングを展開する「AKKODiS」は世界約30カ国・地域に事業を展開し、売上高は年間6000億円を超える。ベンチャーセーフネットの創業3年目に入社し、現在はAkkodis APAC(アジア太平洋地域)の代表と日本法人であるAKKODiSコンサルティングの代表取締役社長を務める川崎健一郎氏に、「IOWN」の普及に向けた想いと同社の事業戦略についてMM総研の関口和一理事長が聞いた。

 
――IOWNの話の前にまず会社の沿革やブランドの由来を聞かせて下さい。

 「1997年に創業した技術系人財派遣会社のベンチャーセーフネットがAKKODiSの前身です。その後、会社分割によりVSNを設立し、2006年には上場も果たしましたが、2008年のリーマンショックで経営が厳しくなり、2010年にMBO(経営者による買収)によって再建を目指すことになりました。そんな時に出会ったのがスイスのチューリッヒに本社を置き、約60カ国・地域で事業を展開する世界最大の人財サービス会社、Adecco Groupでした。同グループにはデジタル人財に強い『Modis(モディス)』というブランドがあり、2022年にR&D(研究開発)系の『AKKA Technologies(アッカ・テクノロジーズ)』を買収し、両社を統合してできたのが『AKKODiS』です」

――IOWNに出会ったきっかけと、そこに注力しようと思った理由は何ですか。

 「私たちの主力事業はエンジニアを企業に派遣するビジネスですが、コンサルティングや請負事業も行っています。NTTグループとは長きにわたりお取引があり、2019年に『IOWN構想』が発表されたことを受け、当時、策定中だった私たちの中期事業計画にもIOWNの推進事業を組み込むことにしました。AKKODiSとしてはデジタル化と脱炭素社会の推進を目標としており、AIの利用拡大に伴う電力消費の問題を解決できる日本発の技術がIOWNだと思ったからです」

――IOWNの普及を促すデジタル人財教育に力を入れていますが。

 「IOWNを推進するには人財育成、ユースケースの創出、グローバル展開の3つが重要です。IOWNは既存のネットワークをすべて置き換えるわけではなく、大量のデータを扱うところで使われる技術です。その意味では既存の技術と新しい光技術の両方を理解し、用途も考えだせる人財が必要です。インターネットが登場した時に従来のスイッチに加え、ルーターという技術が加わりましたが、その利用を促すために開発元の米シスコシステムズは、技術開発と並行して、人財育成にも力を注ぎました。技術者の認定資格制度もそのひとつです。私たちもIOWNについてそうした仕組みをつくっていきたいと考えています」

――本社に「AKKODiS IOWN FUSION BASE」を設置した狙いは何ですか。

 「IOWNを広めていくには機器の開発も重要ですが、それを広める人財が不可欠です。新しいイノベーションを起こすには技術と技術、人と人とを結びつけるHub(ハブ)が必要だと考え、2025年6月にこの施設を設けました。『Fusion(融合)』と名付けたのは、そうした技術や人が集まる場所にしたいと思ったからです。ちょうど私たちの本社があるビルにはNTTグループの事業所があり、IOWNのオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)を導入しやすい環境にあったため、実際にIOWNを体感できる場をつくり、多くの方にその可能性を肌で感じていただきたいと考えました」

――IOWNの社会実装を促す意味で今後、何が重要だと思いますか。

 「やはりユースケースの創出が重要です。IOWNを体験してもらい、新たな用途をユーザーの皆さまにも考えてほしいと思い、今回のイベントにも自動車、防衛・航空、建設など幅広い業界の皆さまにご参加いただきました。「ふれあう伝話」を体感してもらった建設業界の方からは『これだけ速く伝わるなら、北海道など遠方にある建設機械を東京から操作することも可能ではないか』という声をいただきました。IOWNを知識として知っているだけでなく、実際に体感していただけたからこそ、生まれた発想だと思います。技術と現場をつなぎ、アイデアを実装へと導く。それこそがエンジニアリングとコンサルティングを担う私たちの役割だと考えています。IOWNの価値を伝え続け、IOWNの技術に精通する人財を育て、新しいユースケースが生まれる場づくりを続けていきたいと思っています」

インタビューに応えるAKKODiSコンサルティングの川崎社長(聞き手はMM総研の関口和一理事長)