◎文明史の広大な視野から解き明かす中国膨張の論理と本質!
京都大学名誉教授・中西輝政氏が座長を務めるフォーラム「文明学の世紀」メンバーによる台頭著しい隣国「中国」を前に日本人が持つべき視座
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2008年8月から始まったフォーラム「文明学の世紀」は、日本と中国との関係を長期的・短期的の両視座から省察できる研究会として10年以上続いている。中国文明論、日中歴史分野、日米関係、中東、ロシアなどの研究者・ジャーナリストなど21名の議論をベースに、各メンバーが文明学的視座から執筆。日本人が自身の「文明」について考えるために、また台頭目覚ましい隣国「中国」を前に、どのような視点を持てばよいのか提示する。
[目 次]
はじめに 中西輝政
第Ⅰ部 中国と近代文明
第1章 近代中国の知識人は「文明」をどのように捉えたのか(川尻文彦)
第2章 近代化の果てに出現した中国――中華人民共和国の履歴書(北村稔)
第3章 中央ユーラシアにおける清朝とロシア帝国:多元的文明の接触(山添博史)
第Ⅱ部 中国と「辺境」の対峙
第4章 中国とその「辺境」認識――沖縄からモンゴルへ(岡本隆司)
第5章 中国の中央=地方関係と北京=香港関係(三宅康之)
第6章 台湾民主化と中台危機の構造――統合と分離の政治力学(井尻秀憲)
第7章 事大と交隣――大陸と半島と列島(岡本隆司)
第Ⅲ部 台頭する中国との関係
第8章 中国の「知能化戦争」――「パンデミック」以後、種としての人類の未来とディストピア(浅野亮)
第9章 東南アジアにとっての中国問題(三宅康之)
「はじめに」より――
中国は二一世紀の世界でどのように行動し、全体としてどのような位置を占めるのか。すなわち中国と国際社会=世界との関係を大きな構図で考えるには、どうしても歴史に深く棹を差すことが必要である。しかし、そこには「中国史」という、およそ中国について考えようとすれば、向き合わなければならない大きな「壁」が立ち現われる。
なぜなら中国に限っては、歴史はその独特の宇宙観やイデオロギー性のゆえに、つねにカッコ付きでしか取扱えない厄介なテーマであるからだ。しかしまた、中国について考えるとき、「歴史」は迂回することのできない大きな壁なのである。そして、この壁を乗り越える方法の一つが、「文明」という観点――もちろんそれにも特有の「障壁」があるのは百も承知なのだが――ではないのか、というのがこのフォーラムの当初からの視座でもあった。
(中略)
二〇一〇年代の中国を取り巻く情勢の激変と多分に危うさも含んだ現状への推移には目を見張るものがあった。この状況は今後も継続してゆくことは間違いなく、日本を含め世界中がいま、そのことに視野を集中させている。しかし、むしろこうした状況の中にあるがゆえに、今こそ我々は、再び世に先駆けてもう一度、歴史と文明の展望台に身を置くことで、より遠くまで見通せることを訴える必要があるのではないかと思う。