韓国の「読み方」

2017年7月4日

»著者プロフィール
著者
閉じる

澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

 文氏は5月の大統領選直前に行ったワシントン・ポストのインタビューでも「米中の議論や、米国と北朝鮮の対話を後部座席から見ているという状況は、韓国にとって望ましいものではない」と語っていた。2000年に行われた初めての南北首脳会談から17年となったことを記念する6月15日の記念式での祝辞では、金大中大統領(当時)の業績について「朝鮮半島問題の主人は我々自身であると身をもって実践的に見せてくれた」と指摘し、「我々が運転席に座って周辺国との協力に基づいて問題を引っ張っていけることを見せてくれた」と称賛していた。

 「韓国の主導的役割」について米国の了解を取り付けたと理解した文氏はこれから、北朝鮮との対話により積極的な姿勢を見せるようになりそうだ。ただし、北朝鮮が簡単に応じるとは思えないので、すぐに何かが進展することはないだろう。北朝鮮は、韓国の政権が対話に前のめりになると足元を見て揺さぶろうとするのである。

米韓で食い違う?「対話のための適切な条件」

 トランプ政権も、北朝鮮との対話を否定しているわけではない。「すべての選択肢」を検討すると言ってきたトランプ政権だが、先制攻撃が非現実的であることや金正恩政権の転覆が政策目標に入っていないことは明確だ。日本海への空母派遣などで4月には緊張が高まったものの、5月になるとマティス国防長官やティラーソン国務長官がそうした穏当な発言を繰り返すようになった。

 だからこそ米韓首脳会談では、韓国側の希望も受け入れて対話に関する言及が厚めになったのだろう。トランプ政権にとっても「適切な条件」の下で北朝鮮との対話に応じると表明することは全く問題ないからである。

 ただし、「適切な条件」についての理解が米韓で一致する保証はない。

 文氏は首脳会談翌日に韓国人記者団との懇談で「対話の条件」について説明している。聯合ニュースによると、文氏は、対話の条件について「トランプ大統領は、変化する情勢の中で『感覚』で判断するしかないのではないか、近くにいる韓国の方がよく感じ取れるのではないかと言いながら、むしろ(韓国を)信頼する様子を見せた」と話した。文氏はそのうえで「現段階では(条件を)特定しないのが賢明だ」と延べた。

 文氏の発言を額面通りに受け取ると、トランプ氏は韓国に大きな裁量を発揮してもらいたいと言ったことになる。ただ、トランプ氏であるだけに真剣に考えた末の発言なのだろうかという疑念が残る。米韓は高官級の協議体を設置して話し合うというが、事務レベルで話を始めたら簡単に結論が出るとは思えないのである。

 両首脳の共同声明は圧力路線も強調した。国連の全加盟国が安保理制裁に参加することが必要だと訴えるとともに、「北朝鮮が挑発的行為を中断し、真摯で建設的な対話の場に復帰するよう最大の圧迫を加えるため、既存の制裁を忠実に履行しながら新たな措置も取っていく」という具合だ。「重要な役割」を担うと中国を名指ししてもいる。

 米国は首脳会談直前、北朝鮮と取引していた中国の地方銀行に対する制裁措置を発表した。このタイミングでの発表には、「今は制裁局面だ」ということを韓国に見せるという意図もあったと考えられる。対話に前向きな韓国側との温度差をうかがわせるものだ。

関連記事

新着記事

»もっと見る