世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月13日

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 米ハーバード大学のナイ教授が、トランプ政権になって米国のソフトパワーは侵食されているが、トランプ後には確実に回復するだろうと2月6日付のProject Syndicateで述べています。主要点は次の通りです。

(iStock.com/pialhovik/dibrova/Littlewitz)

 トランプ政権になって米国のソフトパワーは侵食されている。134か国を対象にしたギャラップ調査では、米国についてプラスの評価をした人は30%しかいない。ソフトパワー30によると2016年には第1位だった米国が昨年は第3位に落ちた。トランプ政権はソフトパワーを重視しない。国務省のUSAID予算は3割カットされた。米国第一主義者にとり世界がどう思うかは二義的でしかない。

 ソフトパワーは強制や金銭に頼らずに人々を魅了する力だ。アジェンダ・セッティングを行い、議論の枠組みを決めることができればそれもパワーになる。

 ソフトパワーは3つの要因、(1)文化、(2)民主主義や人権等の価値、(3)政策で決まる。政府の国内での振る舞い(報道の自由等)、国際機構での振る舞い(他者との協議や多国間主義)、外交での振る舞い(開発支援、人権の推進)も影響する。これら全ての分野でトランプは米国の魅力的政策をひっくり返してきた。

 幸いトランプ政権が米国のすべてではない。ソフトパワーの多くが政府とは無関係である。自由な社会では政府は文化を制御できない。文化政策の欠如自体が魅力にもなりうる。企業、大学、財団、教会など非政府団体がソフトパワーを育むこともある。そして、それは今後ますます重要になるだろう。

 協力には程度の差があり、協力の程度は魅力や反感により影響を受ける。更にソフトパワーは非政府のアクターにも及ぶ。

 偽善的な政策や狭い国益に基づく政策はソフトパワーを損なう。2003年イラク侵攻後の調査で米国の魅力は急落した。1970年代にはベトナム戦争で、米国の人気は下落した。戦争の記憶が薄れるに従いソフトパワーは回復した。

 米国のソフトパワーの主要源泉は開かれた民主プロセスにある。間違った政策により魅力が下落した時も、それを批判し間違いを直す能力が魅力になる。ベトナム戦争の時多くの国民が「We shall overcome」を歌った。米国は今回も乗り切るだろう。トランプの後には米国のソフトパワーは確実に回復するだろう。

出典:Joseph S. Nye ‘Donald Trump and the Decline of US Soft Power’ (Project Syndicate, February 6, 2018)
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-american-soft-power-decline-by-joseph-s--nye-2018-02

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