WEDGE REPORT

2018年4月10日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

Q: 今後、一帯一路はどう進み、日本はどう関わるべきか

 一帯一路では国単位での協力が強調されていて、今のグローバリゼーションの流れから若干異なる部分もあるということを指摘しておきたい。今のグローバリゼーションは、国と国との関係では成り立たなくなっている面が出てきている。「スパイキー・グローバリゼーション(特定の地域に集中したグローバル化)」という言葉があって、いわゆる国と国ではなくて、むしろ、特定の地域や都市同士のつながりが非常に強まっている。中国の深圳とシリコンバレーとか、ニュージャージー州と台北の新竹の医療系ベンチャーがつながっているといったように。

重厚長大型の一帯一路に注目しすぎると弊害も

 一帯一路は、土木や交通、インフラをやっていくという話なので、オールドエコノミーだ。そこに利益があるのは間違いないが、利益が果たして大きいのか見極めないといけない。

 中国にあるソブリン・ウェルス・ファンド(政府が出資する投資ファンド)の中国投資(CIC)は、そういったオールドエコノミーの重厚長大産業にお金を出す意味があるのかという議論を相当している。彼らはリターンの大きいものに投資していこうじゃないかという視点を持っていて、そういうのは日本でも議論していっていいのではないかと思っている。

 これから伸びていく産業というのは例えばAIであり、フィンテックであり、ロボットなので、そういうところと一帯一路は今のところリンクしていない。もしかしたら将来的にリンクするかもしれないが、そこに日本としてそもそも活路を見出していくのかというのは、議論としてありうるのではないか。

 JBICでは、日本の総合商社がリードして海外でのインフラ事業を展開していく場合に、それを金融面から支援するということが多い。総合商社も社内で相当議論をしていて、オールドエコノミーでは今後利益が出ないかもしれないという中で、シリコンバレーやイスラエルにオフィスも人も入れ始めている。つまり、電力や鉄道、資源関係プロジェクトなどで大きな資本で物事を進めるという時代から、少しシフトしつつある。日本としても、着目すべきなのはそういうところではないかと思う。

 一帯一路はオールドエコノミーという射程を越えて、ニューエコノミーに絡んでいくのか、いかないのか。また、そもそも一帯一路は中国の経済活動の一つの結果であるのか、それとも一帯一路があるから何かが動くという面があるのか。現実をしっかり注視していく必要があるだろう。ただ、現状の一帯一路案件はオールドエコノミーばかりであり、そうすると、中長期的に一帯一路にフォーカスしすぎることで、中国を含む新興国経済の新たな動きが見えにくくなるという弊害もあると考える。

  
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