2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年2月24日

 「午後2時10分、警戒中の警官が群衆の中から男性2人を連行しようとすると、カメラをもつ外国人ジャーナリストたちにつきまとわれ、囲まれた。2時35分、警察が交通渋滞を緩和させる措置を取ると、人々は徐々に去っていき、同50分、群衆は離散した」

 国内で報道させないため英文を利用するのは、新華社がよくやる手だが、海外向けにも集会に対して断固とした措置を取ったことを訴えたかったからだ。

 今回の集会計画は、米国の中国反体制派系ニュースサイト「博訊新聞網」を通じて詳しく伝えられたが、「博訊」はネット上で「原稿が来てそのまま載せた」としており、発起人は不明だ。22日になり、「博訊」の臨時版ブログは、「発起人」の名前で「もし今週木曜日(24日)夜までに政治犯が釈放されなければ、われわれは今週も20日と同じ場所で集会を継続する。みんな集まってほしい」と呼び掛けた。この「発起人」が20日の呼び掛け人と同一であるかは不明だが、ある知識人は「おそらく米国から呼び掛けられたのだろう」と予測する。

「敵」不在、「公安力」誇示する演出

 それにしても、今回の集会に対して中国当局が取った対応をどう分析すべきか、答えを見つけるのは難しい。

 確かに集会予定場所に多数の警官を張りつかせ、常日頃からマークする民主活動家や人権派弁護士らを事前に拘束したり、外出制限にしたりするなど、力で不安の芽を潰そうとする手法に変わりはない。人権活動家の滕彪氏は19日、自身のツイッターで「今後公安当局から(派出所で)お茶を飲もうと誘われて拘束される際、もうジャスミン茶を飲ませないだろう」と皮肉を言い残した後、公安当局に拘束された。

 しかし集会を見る限り、恐らく本当に一党独裁体制を倒そうと思って現場に来た者はいないだろう。

 こうした中、公安当局は、外国メディアを排除せず、繁華街といえども集会現場で大量の野次馬の通行を認めるというリスクを冒し、怪しそうな人間を捕まえて連行した。いわば「敵」不在の現場で「敵」を倒す。大衆監視の下で「敵」をでっち上げ、ここぞとばかりに「公安」の力を内外に誇示するパフォーマンスを演じようとしたのではないか。社会安定への危機を高め、不穏な動きを徹底的に取り締まる姿勢を示す狙いがあったはずだ。

ネット空間で発言権高める知識人を警戒

 冒頭掲げた「官と民のせめぎ合い」のうち、まずここでは集会に至るまでの「官」の動きを追ってみよう。胡錦濤指導部が、中国を統治する上で公安依存体質を強めている実態がうかがえる。


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