2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年2月24日

 民衆蜂起で政権が崩壊したチュニジアの「ジャスミン革命」に触発され、2月20日に北京、上海、広州など中国13の都市で集会を行うようインターネット上で呼び掛けがあったが、中国公安当局は厳戒態勢で騒ぎを抑え付けた。筆者も「中国に革命は起きるのか」と聞かれたが、1989年天安門事件後の中国の「安定」を可能にした大量の「公安力」と巧妙な「情報操作力」という2つの「力」を駆使すれば、抑えることも困難ではないだろう。しかし何か不気味さを感じてしまうのは筆者だけではないはずだ。

「民」弾圧で体制崩壊への運命

 現時点で中国が本格的な民主化に歩みだす際、一方的な呼び掛けに「民」が呼応し、「官」(共産党政権)が倒れるというシナリオは考えにくい。中国の今後を読むカギは「官と民のせめぎ合い」にあると筆者は考えている。つまり社会に充満する「民」の不満に対し、「官」が危機感を感じ、「民」の声をどこまで政治に反映させる政治改革の方向に向かうのか。逆に「官」が「民」の台頭を力で弾圧すれば、一党独裁という硬直した体制の下、「民」の不満のマグマは社会の底辺で積もり続け、体制延命は可能だが、いつかマグマは爆発し、体制崩壊の運命をたどることになるだろう。

 特に中国は5億人に迫る「網民」(インターネットユーザー)を抱え、「微博」と呼ばれる中国版ツイッターが社会変革を促す起爆剤になっている。あらゆる社会不満や政府への批判は、こうしたネットを通じて行われる。われわれは中国を観察する際、指導者の発言や共産党機関紙・人民日報の見解などに代表される「官」の見解だけでなく、「微博」などネット上に現れる「民」の声も丹念に見ないと、この得体の知れぬ大国を理解できない。

現場は警官、外国メディアと野次馬

 2月20日午後2時すぎ、北京屈指の繁華街・王府井のマクドナルド前は1000人以上が集結。これはネットで呼び掛けられた集会の集合場所だった。

 しかし目撃者に話を聞くと、「警察官と外国メディアと野次馬だらけ。ネットを見てやって来たという人はほんのわずかだった」。公安当局は、外国メディアを徹底して追い払うわけでもなく、取材も黙認していた。上海では、拘束されてでも外国メディアの前で自分の訴えを聞いてほしい陳情者が集まっていた。

 真偽のほどが分からぬまま、ネット情報に踊らされた日本メディアだけを見ていると、今にも「中国にも革命か」と誤解してしまうのも仕方ないだろう。ちなみに国営新華社通信英語版はこう伝えた。


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