2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年2月24日

 胡錦濤国家主席はネット上で既に集会の呼び掛けが行われていた2月19日、党幹部養成学校・中央党校で演説し、「さらに情報ネット管理を強化・改善し、仮想社会の管理水準を高め、ネット世論の誘導メカニズムを健全にする」と指示。「ネット空間」の安定を至上命題に置く考えを強調した。

 続いて集会呼び掛けの当日、「源から社会矛盾を防ぐ」として懸念項目を掲げたのは、国内治安を担当する周永康・党中央政法委員会書記(政治局常務委員)。①強制的な土地収用や立ち退きでの民衆の利益保護②中国で活動する海外非政府組織の管理③ネット管理の強化―を命じた。

 集会翌日には共産党機関紙『人民日報』も続いた。「われわれは多党執政を取らず、指導思想を多元化させず、『三権分立』や両院制を採用せず、連邦制や私有化も行わない」。同日、人民日報系の国際問題紙『環球時報』も、「理論面から言えば、中国社会が全面的な動揺に陥る可能性はゼロとは言えない」と不安を吐露しながらも、「知識人の天職は『批判』であると言う見方は偏っており、最近一部の人たちは社会秩序への挑戦の先頭に立とうと熱中している」と皮肉った。

 ここで読み取れるのは、ネット空間で発言権を高める知識人に対する強い危機感だ。胡錦濤指導部は何より最優先する一党独裁体制を批判し、西側価値観に基づく民主・人権を持ち出す知識人の言論を恐れ、「保守化」傾向を強めているのだ。

中国と重ね合わせ、中東に熱いまなざし

 一方、「民」の動きはどうだろうか。筆者はちょうどエジプトでムバラク打倒デモが本格化し始めた1月末、北京を訪れ、知識人と意見交換した。ホットなテーマは、中東の民主化と中国の現実を重ね合わせた上で、エジプトで民衆の心を一つにしたツイッターやフェイスブック(中国では「微博」)の役割をどう評価するということであった。

 ある改革派の知識人は、「官」から警戒される知識人の役割の重要性を説いた。

 「中国の格差問題は北アフリカ(チュニジア・アフリカ)に似ている。ある日突然、政権が倒れる可能性はある。その時、知識人の役割は何か。政権が倒れることは望ましくない。問題は『倒れた後』にどうするかだ。北アフリカは中国よりいい。イスラム教があり、政権が倒れても宗教でまとまれる。中国には『後』を担う人望あるリーダーも宗教組織もなく徐々に改革するしかない」


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