オトナの教養 週末の一冊

2018年4月27日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 米国の人気テレビドラマ『CSI:科学捜査班』や『BONES――骨は語る』、日本では沢口靖子主演の『科捜研の女』シリーズ、新しいところでは石原さとみ主演の『アンナチュラル』など、法医学や法病理学を駆使して事件を捜査するドラマが人気である。

 推理マニアの私も、とりわけ法医学には魅了される。パズルのピースを丹念に拾い集め、正しく組み合わせて初めて事件の真相という“絵”が浮かび上がる、論理的探索の過程にひきこまれるのだ。

(iStock/KatarzynaBialasiewicz)

 ディスカバリー・チャンネルの「ドクターG」こと、ドクター・ジャン・ガラヴァグリア(米国フロリダ州オレンジ郡オーランド市および周辺部の検死局長)が、本書の序文でいみじくも語ったように、「人は法医学に魅了される。その医学的な細部に関心を持つ人ももちろんいるが、多くの人が興味をひかれてやまないのは、死者がなぜ、どのようにして死体安置所に運びこまれることになったのかにまつわるストーリーだ」。

 また、法医学に携わる者は、苦労はあれど、この仕事を天職と考え、「パズルをつなぎあわせて真実を見つけだすという挑戦を愛している」とも語る。

 本書の著者で、ドクターGの「良き師であり友人」であるドクター・ヴィンセント・ディ・マイオは、まさにそういう人物だ。

銃創の権威が解き明かした黒人少年射殺事件

 ドクター・ディ・マイオは、父親と親子2代の検死医であり、各地の検死局勤務をへてテキサス州サンアントニオのべクサー郡検死局長を25年間務めた。

 2006年に退職後は法医学コンサルタントとして、全米で注目を集めるさまざまな事件の裁判で助言や証言をおこなっている。とくに銃創の権威として知られ、複数の専門書を著しているという。

 本書は、米国の作家でジャーナリストのロン・フランセルとの共著による、ディ・マイオ初の一般向け書籍である。

 父と自分の人生を振り返りつつ、約45年におよぶ検死医、法医学者としての経験のなかから、印象深い事件について経緯を語っている。

 <父と私のキャリアには、指紋と血液型がもっともハイテクな科学捜査ツールだった時代から、現在のDNAプロファイリングや膨大なデータベースまで、近代科学捜査の歴史がまるごと含まれている。だが私は、一九四〇年代の検死医を現代のモルグに連れてきて、半日ほど最新科学についての研修を受けさせれば、それだけで充分に仕事ができるだろうと心から信じている。なぜなら、優れた法医学者の一番のツールは今も自分の目と頭脳とメスだからだ。>

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