世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月24日

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 これからの世界は人口の大きさがもたらす低賃金よりも、ロボット、AI化が生産力の決め手となるので、「中国は人口が大きいから米国を抜いて、世界経済の覇権を握る」との見方は単純過ぎる、とハーバード大学のケネス・ロゴフ教授が、4月2日付のプロジェクト・シンジケイトで述べている。その要旨を紹介する。

(iStock.com/pikepicture/ 3quarks/ LEEDDONG)

・現在の米中貿易紛争においては、多くの経済専門家が、米国の4倍の人口を有する中国が長期的には世界経済の覇権を握ることを当然の前提としている。自分はこれに必ずしも与しない。トランプのやり方が製造業の雇用を大幅に増やすとは思わないが、ロボット、AIが生産性を向上させるので、米国の製造業の規模がより大きくなることは十分あり得るし、その時、中国の人口の大きさは経済にプラスよりマイナスをもたらすものになるからだ。

・例えば、中国の人口の大きさは、高齢者人口をこれから急激に増大させて、経済成長のマイナス要因となるだろう。

・ロボット、AIが生産面で重要になってくると、中国の集権的体制はそのための技術開発には不向きであることが明らかになってくるだろう。ロボット、AI化は、西側では人間が仕事を失うことと、その中で所得を如何に再配分していくかという問題をもたらしている。が、中国ではそれ以前に、低賃金で組み立てた製品の輸出競争力自体を失ってしまうかもしれないという問題が生じる。

 確かに中国は今では5Gの携帯電話開発でも、サイバー戦争の能力でも世界の先頭を切っている。しかしそれでも中国は、新技術の方向を自ら定める力を持っておらず、いくつかの場合では外国の知的財産を盗用しているのである。

・21世紀の経済においては、法治度、エネルギー資源の入手力、耕地の大きさ、水資源などが益々大きな意味を持つ。中国はその集権的システムのまま、余人の予想を超える発展をさらに続け、中所得国の域を越えるかもしれない。それでも、中国がグローバルな優位性を築くとは言い切れないのである。

・米国も、そのダイナミックな技術開発力を如何に維持するか、そして過度の格差を如何に克服するかという課題を持っている。それでも、英国がそうであったように、人口で世界最大でなくとも世界を支配することはできるのである。その意味で経済のロボット・AI化は、ゲームチェンジャーとなり得る。

出典:Kenneth Rogoff,‘Will China Really Supplant US Economic Hegemony?’(Project Syndicate, April 2, 2018)
https://www.project-syndicate.org/commentary/china-huge-population-may-hinder-gro wth-by-kenneth-rogoff-2018-04

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