2024年4月27日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年3月31日

 あらためて思い返せば、国際観光は為替の変動だけでも多大な影響を受けるのだ。この一年余の円高で、中国人以外の外国人観光客の伸びは止まっていた。だからこそ、中国人の存在感がいっそう高まったともいえるのだ。否応なく、今回のことで、観光庁は年間の集客目標を修正せざるを得ないだろう。

あれだけ中国人が働いていたコンビニが……

 もうひとつ見過ごせない現象がある。都心にある筆者の仕事場の付近でも、コンビニや飲食店から、中国系の名札を付けた若者が消え、代わりに「実習生」などと書かれた名札の日本人が働くようになった。ある大手コンビニチェーンは、帰国した中国人正社員は1人もいなかったとするものの、アルバイトに関しては急遽、関連の人材派遣会社を通じて募り日本人を補填した。

 ほかに、全国で数万人の中国人研修生がいるとされる繊維業界では、労働力不足により工場停止に追い込まれる中小企業が少なくない。被災地である岩手、宮城、福島、北関東に工場が集中する自動車部品産業は、震災後、操業が止まったため、世界各地への部品供給が滞り、世界の自動車産業の3割に影響を与えかねないと伝えられたが、この業界でも操業再開の際には、中国人研修生の抜けた穴の補充が課題の一つとなろう。

 横浜中華街や東京池袋の中華街では、店主を含む中国人の帰国のため閉店している店もある。中国人研修生を受け入れていた石和など一部の温泉地でも、研修期間を切り上げ、研修生が帰国した。

日中両国政府の政治的結託の産物

 ふと、私たちは一体、どんな世界に暮らしてきたのだろうという思いにとらわれた。

 中国人であるか否かはともかく、1億3000万もの人口をもち、自国に多くの労働力をもつ国でありながら、多くの企業、あるいは産業自体が、研修生や学生アルバイトという、そもそも不安定な身分の、しかも外国人の労働力に依って立ってきた。この状況を今こそ考え直すときなのだろう。

 そうした労働者に中国人があまりにも多いことの背景としては、隣国であること、外見が日本人と変わらないためサービス業の現場に登用し易い、などの理由のほかに、日中両国政府の政治的結託があったことも大きい。

 長らく、中国人頼みとなって来た留学生政策、研修生制度。観光についても、集客が中国人頼みとなるにつれ、受け入れる各地で、接遇のための中国人労働者を受け入れ易くする策が次々に講じられつつあった。

 私ごとで恐縮だが、筆者は先週、昨今話題となって来た、中国資本による日本の森林等の買収問題の本質について書いた、『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)を上梓した。このなかで、日本をも席巻していた中国人観光客が、実は、かなりの部分で中国政府のコントロールにより日本へ送り出されてきたのではないか、ということを書いた。


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