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2018年8月29日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 スルガ銀行(本店静岡県沼津市)の不動産関連の不正融資が明らかになったことで、アパートローンなど不動産融資に引き締めの動きが広がり、同業界の一部で資金繰りが苦しくなるなど「スルガショック」が起きている。

(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

1兆円を超える不適切融資

 不動産業界では、数年前からほかの金融機関では貸してくれなくてもスルガ銀行に行けば、高金利を取られるが貸してくれるという評判になっていた。しかし、同行の第三者委員会実施した融資の実態調査の結果1兆円を超える不適切融資を行っていたことが判明、シェアハウス向け融資の99%が承認されるなど、審査がほとんどされていなかったことも浮き彫りになってきた。

 事態を重視した金融庁は、ほかの金融機関に対して不動産関連融資は審査を厳しくするよう求めているようで、不動産関連融資の「蛇口」が細くなり、一部の業者は資金繰りがつかなくなっているところもあるという。

 長年続いてきた金融緩和により、金融機関は企業向け融資が伸びないこともあって、カード、アパート、マンションローンなどに注力してきた。金融機関の中にはこれらのローンによる収益が全利益の半分近くにもなる金融機関も出ていた。その中で群を抜いていたのがスルガ銀行だった。

「駆け込み寺」銀行

 同行の場合、リーマンショック後あたりから、伸びが期待できない企業向け融資から個人向け融資にシフトするなど融資戦略を転換した。その中心を担ったのが不動産関連融資だった。アパートローンなどは頭金がゼロでも金利を4.5~5.0%も取る代わりに全額融資するなど、他の銀行ではまねのできない思い切った融資を行って不動産融資を急激に伸ばしてきた。

 主要な地銀ではアパートローンの場合、アパートの建築費用の20%~30%の資金を持っている場合で、残りの建築費について2%~3%の金利で融資するのが通常のパターンだった。スルガの場合は手持ち資金がゼロでも貸してくれるということで、他行で融資を断られた業者の「駆け込み銀行」となっていたという。スルガ銀行はこうした業者に対しては焦げ付きのリスクはあることは承知の上で、高い金利を取る代わりに融資を実行してきた。

 第三者委員会の報告ではスルガ銀行は、融資に当たり書類を偽造したりするなど悪質な違法行為も見つかっており、杜撰な融資実態が日常化していたようだ。

不動産業界全体に悪影響も

 短期間で資金のやりくりをする不動産産業界は、スルガ銀行以外にも頭金なしでも高金利で貸してくれる地域の金融機関を頼りにしてきた。しかし、スルガの実態が明らかになったことで、これまで不動産関連融資で利益を上げていた金融機関もこうした融資を絞り込むことになりそうで、不動産向け融資量が減ると資金の工面に走らなければならなくなる不動産関連業者も出てきそうだ。

 また不動産関連融資を受ける際の不動産担保の掛け目も厳しくなってきている。これまでは手持ち不動産を担保にその価値の60%くらいは融資してくれていたのが、50%~40%に引き下げられてきているようで、不動産を担保にした融資も絞られてきそうだ。こうなると、不動産業界全体に供給される資金量が圧縮されてくるため、業界全体の資金の流れが悪くなる恐れがある。このショックがさらに広がれば、マンションを含む住宅業界全体に悪影響を及ぼしかねない。

 住宅ローンは金融機関の貸出残高として、この10年ほどは着実に伸びてきた。現在は年齢や家族構成などにもよるが、年収の7~8倍程度は借りられるようだが、金融機関が住宅ローンも含めて「蛇口」を絞るようなことになれば、マンションなどの売れ行きにも響いてくることになる。

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