ベトナム戦争時の国民的英雄として知られた共和党上院議員の死に対し、首都ワシントンの全省庁ビル、連邦議事堂そして各州庁舎までが一斉に弔意を表し半旗を掲げたが、ホワイトハウスだけは通常の星条旗がはためいた。42時間後に、退役軍人協会などの猛烈な抗議で半旗に直したが、故人に対するトランプ大統領の“政治的報復”とみられ、波紋が広がっている。
「マケイン家族に深い哀悼と敬意を表す」
重篤の脳腫瘍で療養中だった米議会の重鎮ジョン・マケイン氏(81)の死去から1日たった8月26日、トランプ大統領が発した弔意は、英語でわずか20文字、それもツイッターによるまるでそっけないものだった。
マケイン氏はこれまで「アメリカン・ヒーロー」として国民の幅広い層から尊敬を勝ち得てきた人物だっただけに同日、ジミー・カーター(民主)、ジョージ・W・ブッシュ(共和)、バラク・オバマ(民主)各大統領経験者はじめ党派を超え多くの政治家や各界を代表する著名人から心のこもった弔辞が寄せられた。
これとは対照的に大統領は、故人にではなく遺族への型どおりの弔意だけだったことから、全米のマスコミでもこの点に批判が集中した。
ワシントン・ポスト紙報道によると、弔意表明にあたってホワイトハウス側近たちは大統領に対し、現職連邦議員の死去の際に慣例となっている大統領声明を出し故人の功績にも一言触れるべきだと進言したが、本人はこれを却下、自分の携帯のツイートだけですませた。報道陣にも「マケイン死去」ついては一切口を閉ざしたまま、この日は何事もなかったかのようにバージニア州の自己所有のカントリー・クラブで半日ゴルフを楽しんだ。
騒ぎはそれだけではなかった。
週明けの翌27日、首都ワシントンの全省庁ビル、連邦議事堂、そして各州庁舎が一斉に故人の死を悼み半旗を前日に引き続き掲げたのに対し、ホワイトハウスはいつもの星条旗がポール最上部に翻った。
アメリカでは、国の重要人物の死去の際には葬儀と遺体埋葬終了まで半旗のままにするしきたりになっており、とくに今回は「米国の英雄」マケイン氏の死去だっただけに、全米150万人の会員からなる退役軍人協会や関連団体などからホワイトハウスに激しい抗議が殺到した。
ホワイトハウスはこのままでは、11月に控えた中間選挙にも影響を与えかねないと判断して結局、27日夕になって故人の功績にも一言だけ触れた声明を出すとともに、屋上の星条旗を半旗にした。