Washington Files

2018年8月20日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 共和党の苦戦が伝えられる中間選挙を3カ月後に控え、これまで同党に巨額の選挙資金を投じてきた億万長者兄弟とトランプ大統領の“仲たがい”が表面化、改めて金権選挙戦のゆくえに米マスコミの目が注がれている。

 「何百万ドルも政治家たちに献金したと豪語するコーク・ブラザースが、『トランプ大統領は外国労働者たちに不公平だ』という滑稽な発言をしている。だがそれは正しい。アメリカ・ファーストだ!」(7月25日)

 「コーク・ブラザーズは(メキシコ国境沿いの)強靭な壁の構築とパワーフルな貿易に反対している。私は彼らのマネーも、間違ったアイデアも必要としないし、過去に彼らの援助を求めたこともない」(7月31日)
 
 いずれも最近、トランプ大統領が怒りをこめて発したツイートだが、名指しされた「コーク・ブラザーズ」ことチャールズ、デービド・コーク兄弟は、屈指の億万長者として全米で名が知られ、これまで「小さな政府」「自由貿易主義」を標榜する保守運動「リバタリアン」の信奉者として豊富な選挙資金を武器に活発な政治活動を展開してきた。

コーク・インダストリーズ(AP/AFLO)

 11月の中間選挙でもすでに、同兄弟が束ねる政治資金グループ「コーク・ネットワーク」は選挙資金として4億ドル(約410億円)の大金を充てる方針を公表していることから、上下両院の共和党候補たちの間では、自らの従来の主義主張を棚上げしてでもなんとかおこぼれにあやかりたい“コーク・シンパ”も増えつつあるといわれる。

 そんな中でトランプ大統領がツイートで公然とやり玉にあげたのが、去る7月29日、コーク兄弟が避暑地で知られるコロラド州コロラドスプリングスのホテルで開いた「研修会」だった。この日、各地から集まった500人を超える大口献金者たちを前にあいさつに立った長兄チャールズ氏(82)の大統領批判は歯に衣着せぬものだったという。最近、日欧諸国、中国相手に“関税戦争”を仕掛け保護貿易政策を進めようとするトランプ・ホワイトハウスを痛烈に批判したのだ。

 ウォールストリート・ジャーナル紙によると、コーク氏は席上、以下のように語った。

 「歴史を振り返ると、時代の変化から自らを守ろうという衝動は多くの国に悲惨な結果をもたらした。そして保護貿易主義的な考えが数限りないビジネスを破たんさせてきた・・・われわれここに集まった同志たちは、政府がやっていることに賛成することもあれば異議を唱えることもあるが、トランプ大統領が諸外国相手に展開している過激な保護貿易主義は、やがてアメリカに不況を招来させることになる」

 さらにこれとは別に「コーク・ネットワーク」は、関税大幅引き上げなどに反発した関係国が報復措置に出始めた結果、ホワイトハウスが輸出面でダメージを受ける国内農畜産業救済対策として120億ドルもの緊急支出を発表していることや、各国からの移民に対する制限措置を打ち出していることなども問題視し、全国向けTVコマーシャルなどを通じて、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」主義を厳しく批判してきた。

 ここに至るまでのアメリカ政界におけるコーク兄弟の存在は、まさに伝説的と言っていい。

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