World Energy Watch

2019年2月18日

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高収益事業は中国企業のもの?

 昨年3月ソフトバンク・グループ孫正義会長がサウジアラビア・ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と共同記者会見を行い、2億kWの太陽光発電設備をサウジアラビアに2030年までに建設する覚書締結を発表した。北海道電力から沖縄電力まで、日本の一般電力会社10社が保有する全設備とほぼ同規模の設備量であり、2017年末の全世界の太陽光発電設備設置量約4億kWと比較すれば、その設備の大きさが分かる。投資額が日本円に換算し20兆円を超えることも話題になった。

孫正義氏とサルマン皇太子(Bandar Algaloud/Saudi Kingdom Council/Abaca/AFLO)

 産油国サウジアラビアは石油に代わるエネルギーを必要としている。太陽光発電による電気を欧州に送電することで、エネルギー供給国の地位を維持することが本構想の狙いの一つだろう。もちろん、石油収入があるうちに高収益事業に投資を行い、投資収益により将来の財政を維持する狙いもある。サウジアラビアもソフトバンクも太陽光発電事業は高収益事業と考えたのだろう。

 中東、あるいはアフリカ北部の強烈な日照を利用しようと考えたのは、サウジアラビアとソフトバンクだけではない。ドイツ銀行中心の欧州企業連合は、10年前からアフリカ・サハラ砂漠あるいは中東に日照を利用した発電設備を設置し欧州に送電する構想を進めていた。計画された主要設備は太陽光発電ではなく、太陽熱発電だ。

 太陽光発電は、日照が得られない時に送電を行うため蓄電池を必要とする。需要と供給が必ず一致する必要がある電力供給では、夜間に供給ができない太陽光発電には蓄電池は必須の設備になる。蓄電池がなければ、欧州の需要家は夜間に備えコストが掛かる余分な設備を維持する必要に迫られる。一方、太陽熱発電は相対的に安価な蓄熱装置を利用するので夜間でも発電可能だ。発電コストが太陽光より多少高くても、電力供給面を考えると全体のコストでは有利になる。欧州企業の構想が実現に向けて動き出せばサウジアラビアの太陽光発電事業には強敵になる。

 さらにソフトバンクにとっては頭の痛い問題も出てきた。昨年9月末「ウォールストリート・ジャーナル紙」が、サウジアラビア政府がソフトバンクとのプロジェクトを凍結すると報道した。その後サウジアラビア政府は報道を否定したが、この間中国がサウジアラビアに接近していることが明らかになった。3月の構想発表時に触れられた発電設備製造工場建設は中国企業が請け負うことになり、構想の一部はソフトバンクグループでなく、中国企業により担われる。

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