迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年2月28日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

怠惰なブルネイ人と勤勉な日本人

 一方、日本人は勤勉で努力家で頑張っている国民である。日本は非資源国なので自力で活路を見つけないと、直ちに餓死してしまう。だから、ブルネイとは事情が違う。しかし、果たして本当にそうだろうか?

 戦後の日本人は勤勉さで早くも復興を果たし、その後も経済成長の道を順調に歩んだ。多くの国民は頑張りさえすれば、明るい将来が待っていると信じていたし、それは事実でもあった。国民全員にほぼ平等に未来へ通じる軌道が敷かれていた。言ってみれば、ブルネイはエネルギー収入という「現金」を平等に国民に分配しているのに対し、日本は、未来に通じる軌道という「約束手形」を平等に国民に与えていたのだ。

 財貨の分配形態は異なるものの、平等分配という原則は変わらない。唯一の違いは、支給条件である。ブルネイは無条件支給、国民であれば誰もが基本的に「現金」の平等分配を受けることができる。勤勉だろうと怠惰だろうと関係ない。これに対して、日本は勤勉要件を課している。勤勉でさえあれば、将来という「約束手形」が保障されている。基本的に個人の能力とは関係ない。

 これは日本社会特有の感情的な人間平等主義と「能力差の認知回避」願望にぴったり一致するので、都合が良かった(参照:「同一労働同一賃金」が格差を生むワケ)。さらに戦後復興や朝鮮特需といった外部要因が加わったことで、日本の経済成長は加速した。そして経済成長が続く限り、国民に平等に与えられた「約束手形」の現金化・現物化も保障されている。そこで「安全」や「安心」が善とされ、日本人の普遍的価値観が形成された。

 しかし、時代は変わり、状況も変わった。「約束手形」制度を作り出した当時、当てにしていた将来の分配に供される資源はどんどん目減りしている。同時に分配を受けようとする人がどんどん増えてきた。予定通りの現金化が難しくなってくると、「約束手形」の不渡りリスクが高まる。それがいまの日本人に襲いかかった「不安」の正体なのである。

連載:迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

  
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