WEDGE REPORT

2011年11月24日

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11月11日、野田総理はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加を表明した。
「玉虫色」の発言や、発表が当初の予定より1日遅れたことに対する批判はあったが、
「妥協の知恵」を身につけ、今後も交渉が続けられる形となったのは進歩であろう。
しかし、野田総理が掲げた政策決定システムが機能したわけではない。
「総理の動きが見えづらい、説明足りない」と国民が感じるのは、
システムが複雑すぎるからであろう。
大臣以下政務三役は、党内の意見調整プロセスにもっと深く関わり、責任を負わなければならない。
政調会長も、総理に権力を集中すべく、黒子になる必要がある。
野田総理は、「政府与党一元化」という原点を大切にしつつ、
前2代の総理が個人プレーで壊した仕組みを再構築してほしい。

 歴史的な総選挙から2年が過ぎた。この間、民主党への国民の期待は大きく損なわれた。残念ながら政権交代が可能にするはずだった政治はほとんど実現していない。マニフェストは行き詰まり、国民の負託を受けた強いリーダーシップも、思い切った政策転換も、新しい政権運営の仕組みも結局実現していない。

 鳩山由紀夫元総理大臣と菅直人前総理は、個人プレーが多く、先頭に立つことを好んだ。事前調整なき発言を繰り返し、党内をまとめきれず、引きずり降ろされるように退いた。

 今のところ、野田佳彦総理は、2人の前任者とは全く異なる対応を取っているように見える。11月1日の参議院本会議では「安全運転をこれからも心がけていく。乱暴な運転や急に行き先を変える、事故を起こすということは許されない」(読売新聞)と発言したが、これは評価できる現実認識と言えよう。そうした認識はよいとして、仕組みの問題にも正面から取り組む必要がある。

 菅政権末期の状況は、下野直前の弱りきった自民党政権よりも酷かった。自民党には長年の伝統があり、官僚組織に支えられていた。伝統がなく官僚とも距離がある民主党が、政党としてまとまるには自民党以上に努力が必要だが、それを怠った。野田政権の今後は、復興増税、来年度予算、将来の消費増税と、課題が目白押しである。党内で真剣に議論し、一体性を持って政策を実行する態勢を整えなければならない。

政策決定プロセスはどう変わったか

 野田政権は、発足直後に政策決定システムを変えた。政府の意思決定について、政調会長の事前了承を原則とし、さらに、総理大臣、官房長官、党幹事長、幹事長代行、政調会長、国対委員長の6名で構成される「政府・民主党三役会議」で最終承認する形とした。

 これは、マニフェストで掲げていた政府与党一元化の撤回であり、「自民党時代への回帰」だと批判されている。後に詳しく述べるが、私は自民党回帰という段階にはないと判断している。民主党が政権党として成熟するためには、各議員、とくに大臣と政調会長が軸になって、政府与党一元化に向かって党内をまとめられるかが鍵であるとみている。

 自民党政権では、省庁単位の「政務調査会(政調)部会」、全体会である「政調審議会(政審)」、党三役も出席する日常的な最高意思決定機関「総務会」と、3段階で法案原案が審議された。すべてを通過し、総務会決定を経た法案には所属議員に党議拘束がかけられた。政府側では、党の総務会決定がなければ、法案を閣議決定しないという慣行が長く続いた。この「党による事前審査制」が、政府与党二元体制を生んだ。

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