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2019年5月24日

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田中浩一郎 (たなか・こういちろう)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授

東京外国語大学大学院アジア第2言語修了後、在イラン日本大使館で専門調査員、国連アフガニスタン特別ミッション政務官等を歴任。2012年より日本エネルギー経済研究所常務理事を経て、17年より現職。

 米国のトランプ政権が展開する外交戦略の中で、このところ動きが顕著なのが中東外交だ。イスラエルに対して示す深い理解と同調、そしてその一方でイランへの強硬姿勢が目立つ。昨年5月に米国が断行した核合意からの一方的な離脱と制裁復活後も、粛々とこの合意を遵守(じゅんしゅ)し、米国などからの挑発に対して忍耐で応じるイランを、イスラエルなどとともに徹底的に追い詰めようとするトランプ政権には執念さえ感じる。

2月11日に行われたイラン革命40周年記念式典に出席する革命防衛隊
(AP/AFLO)

 だが、こうした方策が、トランプ大統領が公言するような米国の国益と中東地域の安全保障と平和に寄与しているのか甚だ疑問であり、域内外情勢の不安定化をむしろ助長している様子さえうかがえる。

 トランプ政権がイランを相手に仕掛ける史上最強の制裁の目的は、弾道ミサイル開発、国家としてのテロ支援、周辺国を不安定にさせる内政干渉、イラン国民に対する人権侵害など、イランにその「問題行動」の変更を促すことにあるという。だが、この問題行動に対する批判を通じて、米国が2003年のイラク戦争のように、イランでも体制転換を企図しているとの疑念が晴れない。米国は、核合意からの離脱に続く二次制裁の復活によってイラン経済を麻痺(まひ)させ、体制内部からの自壊も画策していると考えられる。

 これに対して、20年秋の米大統領選挙でトランプ大統領が落選することに望みを繋ぐイランは、徹底した「籠城」を決め込むことで、イランの孤立を狙う米国が期待するような極端な行動─例えばイラン自身による核合意離脱─を自制している。そこで米国は、イランに「失策」を犯させるため、あらゆる方面からイランを刺激している。

革命防衛隊のテロ組織指定で

中東に迫る一触即発の危機

 その一つが4月8日にポンペオ国務長官が発表した、イランの軍事組織であるイスラーム革命防衛隊に対する外国テロ組織(FTO)指定だ。ポンペオ長官と国家安全保障担当のボルトン大統領補佐官は、トランプ大統領とともに、革命防衛隊を通じたイランのテロ支援を終息させる措置と説明し、制裁強化を正当化している。

 だが、革命防衛隊は、すでに07年の時点で大量破壊兵器拡散に絡み、米国の二次制裁が適用される取引対象に指定されているため、新たな措置は象徴的な意味しか持たない。むしろ、米国がこれまで日本など8カ国に認めてきたイラン原油取引に関する二次制裁の適用除外を5月2日から撤廃したことの方がイランに打撃となるだろう。

 一方、FTO指定を通じて、制裁以外の面で大きな変化が生じ得るのが、米軍の対応である。9・11米国同時多発テロ後に制定された武力行使権限の承認(AUMF)に基づき、米軍は、個別的に議会からの承認を得ることなく、アル・カーイダやイスラーム国に代表されるテロ組織を攻撃することが可能な状態にある。

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