シルバー民主主義に泣く若者

2012年7月12日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所チームリーダー 

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

 いささか旧聞に属する話で恐縮であるが、2010年6月に菅直人内閣により策定された『新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~』を覚えているだろうか。その中では、20年近く続く日本の閉塞状況の主たる要因を、低迷する経済、拡大する財政赤字、そして信頼感が低下した社会保障であると断じ、元気な日本を復活させるためには「強い経済」の実現が肝要であるとした。

 その「強い経済」実現の一つの鍵が、ライフ・イノベーションによる健康大国戦略である。具体的には、「日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進」「アジア等海外市場への展開促進」等を図ることで、医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へ変貌させ、2020年までに医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出により、新規市場約50兆円、新規雇用284万人を創出するとのことだった。

日本は「医療イノベーション大国」となれるか

 ただし、今年5月に野田内閣により行われたフォローアップでは、対象となった全409項目中「実施済かつ成果あり(A評価)」と評価されたのが39件の1割弱、うち健康大国戦略に限って見ると、対象項目57件中A評価はたった2件であり、全体の平均を大きく下回る結果となった。

 また、これとは別に、先月、政府は、「医療イノベーション5カ年戦略」を策定。これまでの「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」を継承・発展させ、産学官一体となって、医薬品・医療機器産業を育成し、世界一の革新的医薬品・医療機器の創出国となる、再生医療や個別化医療のような世界最先端の医療の分野で日本が世界をリードする実用化モデルを作る。

 さらに、医療サービスのイノベーションに向けての検討を併せて進めることで、医療イノベーション大国としての地位を築くことを目標に掲げた。この「医療イノベーション5カ年戦略」は、国家戦略会議が今月内にも取りまとめる「日本再生戦略」に盛り込まれる予定である。

 現在、例えば、医薬品分野や医療機器分野等は、国際的な競争力に劣り、貿易赤字を計上している。果たして、医療・介護・健康関連産業は政府の目論見通り、リーディング産業へと成長し、日本経済復活の起爆剤となりうるのだろうか。または、日本経済復活の起爆剤とするにはどのような施策が必要なのだろうか。

国民所得の伸びを大きく上回る
社会保障給付費

図1 社会保障給付費の推移
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 まず、残念ながら社会保障関連の民間マーケットの規模が分からなかったので、公的な社会保障支出の規模を見てみよう。

 政府による社会保障支出は1980年には24.8兆円だったものが91年には50.1兆円と12年で倍増。99年には75.0兆円と3倍となり、そして小泉内閣下では高齢化に伴う自然増分2200億円の削減が実施されたため伸びは鈍化したものの、その後麻生内閣において削減路線が転換されると再び増加に転じ、2009年では99.9兆円と4倍に達した。なお、11年度の当初予算ベースでは107.8兆円となっている(図1)。

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