シルバー民主主義に泣く若者

2012年9月13日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所チームリーダー 

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

 本連載ではこれまで社会保障制度や労働分野における世代間格差と、世代間格差の問題が認識されながらも放置され続ける原因の一つとしてシルバー民主主義の存在を指摘した。

 今回からは世代会計の発展型である生涯純負担率という手法の解説とそれを用いて日本の世代間格差について数量的な把握を行うとともに、各国の状況と対応策について紹介する。

財政赤字や政府債務残高を重視する理由

 わが国をはじめとした多くの国々の財政当局は、財政赤字と政府債務を財政運営上の重要な指標として採用し、それぞれの指標の安定的な推移に腐心している。例えば、わが国においては、2010年6月に閣議決定された「財政運営戦略」において「国・地方の基礎的財政収支について、遅くとも2015年度までにその赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減させ、遅くとも2020年度までに黒字化すること」などを財政健全化目標として掲げている。

 イギリスでは、2010年に行われた総選挙後の保守党と自由民主党による連立政権協議に際して、2015年までに構造的財政赤字を解消することで合意した。また、EUでは加盟国に財政赤字対名目GDP比3%以内、債務残高対GDP比60%以内を義務付け、これに違反した場合のEU側の必要な措置についても定めている。

 それではなぜ、財政当局は、財政赤字や政府債務残高を殊更重視しているのだろうか。この疑問に対しては、通常次の2つの理由が挙げられる。すなわち、一つは、現在やこれまでの財政政策のスタンスを表すからであり、もう一つは、将来世代の負担の大きさに関する代理指標となるからである。

 しかし、アメリカの経済学者のアワーバック、ゴーケール、コトリコフらは、そもそも「政府」の範囲をどう捉えるのか、単年度という近視眼的な視野では中長期的な財政スタンスを示せないこと、財政収支概念や数値が政府により恣意的に変更されてきたことなどを指摘。上記2つの目的に対して財政赤字はなんら有効な指標とはなりえないことを示し、新たに世代会計という概念を提示した。

「世代会計」とは?

 世代会計の目的は、政府財政は破綻しないという考え方に基づき、政府の収入と支出をより広い範囲で捉え、国・地方・社会保障からなる一般政府の現在から将来にわたる収入と支出を、その裏返しである個人の負担と受益の観点から、世代別の生涯受益額・生涯負担額に分解し、政府と個人の間の収支勘定を世代別に定量的に評価するものである。

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