パキスタンのグワダル港を得た中国
「真珠の首飾り」に神経をとがらせるインド


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米海軍大学のホームズが、Diplomat誌ウェブサイトに2月9日付で掲載された論説で、中国はパキスタンのグワダル港の運営権を得ることとなったが、同港は軍港には適さず、また、余程のことが無い限り、パキスタンが、同港の有事における軍事利用を中国に認めることもないであろう、と述べています。

 すなわち、中国が多額の資金を投じて開発してきたパキスタンのグワダル港の運営権が、シンガポールのPSA社から中国の国有企業に移管されることとなった。この移管は長年の懸案であったので特に驚くべきことではない。

 しかし、インド政府関係者は、インド亜大陸の西の脇腹に中国が進出してくることへの懸念を表明している。グワダルのコンテナ港を改良すれば、軍艦の入港も可能になるので、インドを取り囲む中国の海軍基地ネットワーク「真珠の首飾り」の一環になるのではないかとの懸念である。

 インド・太平洋地域で一種の連鎖反応が起きており、西部太平洋では、中国が海洋覇権国の米国に包囲されることを懸念し、南アジアでは、インドが将来の覇権国たる中国に包囲されることを懸念している。

 但し、現時点では、インド側は心配し過ぎである。この点は、マハンの海軍基地評価基準に照らし合わせれば明らかである。マハンの第一の基準は、地図上の位置であり、重要なシーレーンやチョーク・ポイントに近いか否かである。第二の基準は、強度であり、自然の要塞か或いは要塞化が可能か否かである。第三は、資源であり、周辺地区からの補給または船舶による補給が可能か否かである。

 グワダル港は、インドの西にありホルムズ海峡にも近いので位置は問題ないが、強度は無く、補給も駄目である。同港は、海岸から突き出た狭い土地にあり、航空機及びミサイルによる攻撃の絶好の標的になる。補給は、反乱に悩まされているバルチスタン経由となる。マハンならば、中国にグワダルは推薦しないであろう。

 マハンの三つの基準に、新たに、同盟関係への配慮という四つ目の基準を付け加えたい。パキスタンが平時に中国海軍による同港の利用を認めるとしても、有事にも認めるとは言えない。同港の潜在的な経済的価値が極めて大きいからである。パキスタンの体制が危機的状況になることでもない限り、「真珠の首飾り」に同調することは避けるはずである。その代償が大きすぎるからである。

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