2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月4日

 ヘリテージ財団のアジア専門家である、ローマンとシザーズが、経済的にも戦略的にも長期的な利益が得られる可能性が大きいので、インドのAPEC加盟を後押しすべきであると、2月15日付同財団ウェブサイト掲載の論説で論じています。

 すなわち、この5年ほど、米国の通商政策はあまり成功していない。こうした状況下では、米国は、短期的な貿易政策より長期的な利得にもう少し目を向けるべきであろう。インドは、持続的な自由市場改革をおこなっており、莫大で長期的な経済的利得の源泉を提供している。これに対応する、利益を最大化する長期的アプローチの一歩は、インドをAPECのフォーラムに招待することであろう。

 インドのAPEC加盟は、短期的なインパクトはほとんどない。APECは、加盟国の拘束力あるコミットメントを要求するものではなく、オープンな貿易へのレトリカルな支持を要求し、加盟国の自発的な自由化の申し出の集積場としての役割を果たすものである。

 APECが実行している最も重要なことは、規制についての情報共有である。インドが加盟するためには、インドは、自由で開放的な貿易と投資という、APECの使命にコミットしなければならない。また、規制環境に関する情報を提供し、それを、現に存在する、あるいは、他のメンバー国によって導入される、将来の規制と調和させるべく努力しなければならない。インドがそうした情報を提供し吸収する能力を構築するには数年かかるであろうが、このプロセスに忍耐すれば、全てのAPECメンバー国は、より適切な規制基準による、より大規模で活発な経済活動という利益を得られよう。

 賭けは、長期的には、より高くなる。米国の立場からは、インドは、WTOの場でも二国間でも、貿易の面ではよい外交的パートナーではなかった。APECにおいても良いパートナーでないということも確かにあり得る。APECの世界貿易への貢献は既に大きくなく、インドの参加は、さらに事態をややこしくさせる可能性がある。将来のインド政府が、APECを米国の国益を害するやり方で利用する可能性すらある。

 しかし、インドがAPECを変えるよりも、APECがインドを変えるという方が、ありそうなことである。APECで、公式な、交渉された市場開放圧力がなければ、インドは、WTOあるいは二国間よりも、APECにおいて、より協力的になると思われる。時が経つにつれ、APECの情報共有機能は、あらゆる経済対話へのインドの参加の質を高め、自由市場改革のベースラインを与えることになろう。

 インドをアジア太平洋の経済クラブに引き入れることの効果を評価するのに、よい先例がある。すなわち、2008年の二国間原子力協定が、インドをグローバルな核クラブに引き込んだことである。インドは、まだ原子力協定を完全に尊重しているわけではないが、インドの核を国際的に認めたことは、より強く、よりグローバルに関与するインドという、米国の戦略目標に貢献した。


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