復活のキーワード

2013年6月17日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

ドイツでは徴兵制を止め、義務教育を修了した男女に1年のボランティアを義務付けた。日本で徴兵制などというとタブー視されがちだが、東日本大震災のような災害時に自衛隊やボランティアが大きな力となったのは事実だ。「災害救助予備隊」を設置して募るという意見もあり、議論すべき課題だ。

 7月の参議院議員選挙で自民党が圧勝すれば、憲法改正に向けた動きが具体化することになる。賛否いずれにせよ、憲法と真正面から向き合って議論することが必要になるが、問題はタブーが多すぎることだろう。日本では問題が大きければ大きいほど、議論自体を封じてしまう傾向がある。以前この欄で取り上げた移民問題などが典型だ。

 憲法改正論議でのタブーの1つは徴兵制ではないか。議論しないが故に、諸外国の情勢変化にも鈍感で、左右両派に分かれた神学論争に陥りかねない。日本では紹介される機会が少ないが、ここ数年で徴兵制を大きく変えた一例がドイツだ。

 同じ敗戦国のドイツは1957年から徴兵制を敷いてきた。満18歳以上の男子に9カ月間の兵役を課していた。それを2011年7月1日をもって「停止」したのである。危機に直面した際には復活できるよう法律は残したが、事実上の徴兵制廃止だ。廃止の理由として国の財政負担軽減が強調されがちだが、実際にはそれだけではない。

 第1に「戦争」の形が変わったこと。大人数の歩兵が向かい合って総力戦を展開する伝統的な戦争はもはや想定されなくなった。ソ連の崩壊による冷戦終結がドイツの防衛体制を大きく変えたのは言うまでもない。代わって増えたのが、海外での「テロとの戦い」だ。テロとの戦いとなると十分な訓練を受けたプロの兵士が必要になる。熟練した軍人でなければ簡単に命を落としてしまうのだ。高度化する軍務に従事できる兵士は、プロである職業軍人や意識の高い志願者でなければ集まらなくなっているという現実があるのだ。

 徴兵制停止まで、約24万5000人の軍人のうち5万6000人が徴兵だったが、停止後は志願制に切り替えた。今後は徐々に軍人の総数を18万5000人にまで削減、そのうち1万5000人を志願兵で賄う計画だという。

 ドイツが徴兵制度の停止を決めたもう1つの理由は、徴兵を忌避する若者が増えていたこと。ドイツでは信仰や信念から徴兵を拒否する「良心的兵役拒否」が認められていた。軍務に就かない代わりに社会福祉施設などで働くことが義務付けられていたのだ。この非軍事役務に就いていた男子は09年で9万人。つまり兵役従事者を大きく上回っていたわけだ。

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