2024年5月10日(金)

From LA

2023年7月6日

全体を通して利用できるデータプラットフォーム

 JERAの常務執行役員、サミ・ベンジャマ氏もオープンスタンダードのメリットについて「IoTの発達により、データを運用することでより効率的なオペレーションを行うことが可能になっている。しかしこうしたデータを共有してエコシステム全体で運用効率を上げる、という試みはこれまで成功してこなかった。それはエネルギーという広大なシステムを1社が作り上げたシステムに依存することへのリスクが存在したためだ。世界のエネルギー業界を代表する企業が国際的な枠組みを作り、オープンスタンダードとして広く参加企業を募ることは、業界の縦割りを超えて安全なデータ運用ができるようになることを意味する」と語る。

 つまり今後ソーラー、風力などさまざまなエネルギー事業者が電力供給網に参入し、従来の送電網に参加する。VPP(仮想発電所)を通して太陽光パネルを持つ一般家庭にもエネルギー供給側になる可能性が生まれる。こうした複雑化・多様化する電力網、そしてそれらを調整するデータのやり取り、またIoTを通して電力とデータを使った新しいサービスの提供などが始まる中で、全体を通して利用できるデータプラットフォームは必要不可欠なものとなる。

 こうしたプラットフォームがなければ、それぞれが持つセキュリティなどに合わせたシステムを個別に用意する必要があり、コストもかかれば時間もかかることになる。スタンダード化されたものを採用することで遥かに効率的なエネルギー運用が可能となる。

 さらに、スタンダードを作ることは今後のエネルギーとデータのあり方の方向性を決定づけるパワーを持つことにもつながる。テスラの充電プラグが米国で急速にスタンダード化しつつあるが、これもテスラが電気自動車(EV)黎明期から充電網の整備を行い、安全かつ便利なスーパーチャージャーを提供してきたことが勝因だ。さらにテスラはVPPへの積極的な参加など、エネルギー企業としてのプレゼンスも強めつつある。

 今回日本のJERAがTEIAの設立メンバーになったことの意味は大きい。欧州、豪州と米国をつなぐ国際的なスタンダードの一環に日本企業が加わることで、近い将来の再エネを組み込んだ新しいエネルギー供給の在り方、というシステムの中心となることが可能になる。大きな転換点にあるエネルギー産業にとって、TEIAが示すスタンダードが大きな道標となる可能性は高いと言えるだろう。

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