2024年4月28日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月18日

 12月10日付けのフィナンシャル・タイムズ紙が、同紙の経済コラムニストのマーティン・ウルフによる‘Britain won’t rejoin the EU for decades — if ever’(英国のEU再加盟は数十年は起こらない、仮にあるとしても)と題する論説を掲載している。概要は次の通り。

(Tanaonte/gettyimages)

 英国の世論はブレグジットについての見方を変えているが、英国の欧州連合(EU)再加盟は、数十年は起こらないだろう。

 最近行われた6つの世論調査では、平均で56%が再加盟に前向きな結果となった。離脱に投票した者の内、ブレグジットの結果は悪かったとするものが22%、良かったとする者が18%という調査結果もある。「ブリグレット(EU離脱への後悔)」の感情が広がっている。

 このように現実に目覚めたにもかかわらず、英国は、なぜEU再加盟に向けて努力を払っていくことにならないのか。三つの理由がある。

 第一に、EU再加盟に多くの不確実性があることは明らかである。再加盟を申請するだけでも議会での大論争を引き起こすであろう。国民投票も二回必要と予想される。

 再加盟の交渉を始めるのに一回、その条件を評価するのにもう一回。その間にEUと加盟交渉をすることになるが、どのような結果となるかは見通せない。こうした状況はビジネスにとって悪夢である。

 第二に、EU加盟の可否を再度議論することは分断を招く。国民投票を行えば今度は再加盟の結果となるかもしれない。しかし、それは確かなことではない。

 確かなことは、国の再分断を招くことである。(2016年の)離脱派は裏切りだと捉え、(16年の)残留派はリベンジの機会が巡ってきたと捉えるであろう。

 第三に、更に重要なことに、EU再加盟の条件は英国が決められることではない。EUとして、英国が再度加盟国となるのであれば、かつての英国よりもより協力的で、EUにコミットしている存在であることを求めるのは確実であろう。

 以前は認められていた「選択的離脱(オプトアウト)」も「財政上の払い戻し(リベート)」も認められないだろう。ユーロにも参加しなければならないであろう。

 EUの方もその後、変化した。20年にコロナへの対応の際に合意されたパッケージは共同借り入れを含んだものとなった。ウクライナにおける戦争に際しては、対応を協調することとした。

 英国が再加盟する際には、更に統合が進んだEUを作るコミットメントを伴うものとなりそうである。それは、少なからざる英国人が望んでいないものであろう。


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