2024年4月27日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年5月7日

 80年代の末には法人税を下げたにもかかわらず、また2002年から06年までは税率が一定であったにもかかわらず税収が増加したが、これは景気が回復していたからである。90年代の末には法人税率の引き下げとともに税収が減少しているが、これは景気が悪化したからだろう。要するに、法人税収入は景気次第という以外のことはなかなか言えない。また、法人税を下げたから景気が良くなったのかどうかもわからない。

法人税引き下げの代替財源は5兆円か

 法人税引き下げ賛成派に対して、法人税減税反対派は、法人税は、所得税、消費税に次いで3番目の税収をもたらす基幹税であり、そのような税を減税するのであれば、それに見合った税収を別途確保しなければ、財政赤字が拡大し、財政規律が破壊されるという。また、消費税増税で国民に負担を求めている中で、企業の負担を減らす法人税減税などとんでもないという議論もある。

 両方の意見とももっともらしく聞こえるが、反対派は、法人税を25%(国税のみの税率。地方税が10%あって合わせて約35%だが、地方法人税には手を付けないとする)から15%へと10%引き下げれば5兆円の代替財源が必要と主張している。ここから、反対派の言うことが分からなくなってくる。

 現在25%の法人税で得られている税収は9兆円にすぎない。ということは、1%で3600億円の税収にすぎない。つまり、必要な代替財源は5兆円ではなくて、3600億円を10倍した3.6兆円である。反対派の5兆円は、法人税が12.5兆円あることを前提にしている。

 確かに、12.5兆円を25%で割れば、1%当たり5000億円になり、10%の引き下げは5兆円の代替財源を要することになる。なるほど、小泉政権の末期、第1次安倍政権の時の2006年、07年には15兆円近い法人税収入があった。しかし、これを前提とするなら、景気回復で大幅な自然増収があったことを認めなければならない。

 であるなら、今回も自然増収を財源に法人税減税をしてもかまわないではないか。私は、減税すれば経済が活性化して減税以上の増収があるとは思っていない。しかし、かなりの増収があって、減税による税収分を多少は埋めることはできるだろうと考えている。それが半分とすれば、法人税を10%引き下げることによる税収減は1.8兆円にすぎないということである。これくらいなら、総理の気合いですむ話ではないか。

 民主党は、政府の無駄をなくすことで、子ども手当など16.2兆円の新規施策が可能だと言い張って、政府も党内も大混乱に陥った。16.2兆円の施策は気合ではできない。しかし、1.8兆円ならどうということはない。今すぐ減税すればよい話だ。まず、アベノミクスの第1の矢の大胆な金融緩和による景気回復にともなう自然増収がある。さらに、公共事業単価の上昇による入札不調から公共事業予算の使い残しがある。


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